2022 Fiscal Year Research-status Report
Roles for arginine metabolism in the establishment of plant body plan
Project/Area Number |
22K06289
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
川出 健介 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 助教 (90612086)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アルギニン代謝 / ヒメツリガネゴケ / 代謝フラックス解析 / シュート形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、陸上植物の進化において初期に現れたコケ植物・ヒメツリガネゴケでは、茎や葉からなるシュート組織(茎葉体)の発生および成長がアルギニン代謝の変化で促進される現象を見いだしている。そこで本研究では、茎葉体の発生および成長に応じて活性化もしくは抑制される代謝経路の同定を最初の課題とした。そのために、安定同位体13C(炭素)もしくは15N(窒素)で標識したアルギニンをヒメツリガネゴケ組織に取り込ませ、茎葉体の発生および成長とともに利用される動態を質量分析装置で解析する実験系の構築に着手した。ここではまず、安定同位体標識アルギニンをヒメツリガネゴケ組織に処理する方法を検討するとともに、処理する濃度および時間の組み合わせを最適化することを試みた。そして、安定同位体標識アルギニンを添加した培地の上にセロハンを敷き、その上で培養したヒメツリガネゴケにおいて、安定同位体標識アルギニンだけでなく、アルギニン代謝に関連するアグマチン、シトルリン、オルニチンにも安定同位体を含むものを検出する実験系を確立することができた。次に、安定同位体標識アルギニンを処理した後に時系列に沿って原糸体や茎葉体を採集し、茎葉体で特徴的に見られるアルギニン代謝の動態を同定するための実験に取り組んだ。そうしたところ、アグマチン、シトルリン、オルニチンの3方向へ代謝されうるアルギニンが、茎葉体では特徴的な方向へ偏って代謝されていることが分かってきた。このような、アルギニン代謝の発生および成長に応じた特徴的な変化はこれまで知られていないことから、茎葉体におけるアルギニン代謝の役割について考察する重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
安定同位体標識アルギニンを用いて代謝フラックスを調べる実験は先例が非常に乏しく、限られた情報の中で実験系を確立することが求められていた。そのような状況であったが、初年度に各種条件の検討を重ねて、実験系を確立することができた。さらに、その実験系を用いて、茎葉体で特徴的に起こる代謝動態を見いだすまで研究を発展させることができた。他方で、原糸体と比べて茎葉体では、培地に添加した安定同位体標識アルギニンの取り込み効率が低いことも分かった。これにより、アグマチン、シトルリン、オルニチンが、さらにどのように代謝されているのか検討することが現時点では難しく、実験系のさらなる改善が必要であることが判明したため、やや遅れているという評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
茎葉体をサンプルとした際の代謝フラックス解析において、アルギニンに由来する安定同位体標識を取り込んだアグマチン、シトルリン、オルニチンがどのように代謝されるのか検出できるように改善を試みる。そのために、最も単純な改善策としては、分析に供する茎葉体のサンプル量を増やすことが考えられる。そこで、現実的なサンプル量と、検出に必要なサンプル量のバランスを考慮して実験条件の検討を行う。また、これまで安定同位体15N(窒素)で標識されたアルギニンを用いてきたが、13C(炭素)で標識されたアルギニンを用いて炭素骨格の流れを追跡することにも取り組む。 このような実験系の改善を試みるのと並行し、すでに見いだしている茎葉体における特徴的な代謝変化については、茎葉体の発生および成長との関係性を調べる実験を始める。そのためには、変化のあった代謝経路の推定機能について、代謝物の投与実験や薬剤処理実験から着手する。 初年度は代謝物分析に焦点を当ててきたが、ある程度の進展が見られたので、計画通りに細胞レベルでの解析にも着手する。そのために、まずは茎葉体における細胞の増殖活性や肥大成長活性について、野生株と、アルギニン代謝が茎葉体で特異的に乱れるangustifolia3変異株の比較定量解析を行う。
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Causes of Carryover |
初年度に代謝フラックス解析の実験系の確立を目指していたが、研究が進むと新たな改善点が浮かび上がってきた。その点について検討する必要が生じたため、研究を先に進めるための消耗品の購入額が抑えられた。この未使用分は次年度に消耗品を購入するための研究費として使用する計画にある。
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