2023 Fiscal Year Research-status Report
根毛細胞をモデルとした植物の核移動現象における局所的な液胞再編に関する研究
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22K06293
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高塚 大知 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (70633452)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 根毛 / 液胞 / アクチン / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、根毛細胞の核移動現象におけるアクチンの役割の詳細な評価を行った。その結果、今まで単一の動きであると考えられてきた核の動きが、実は2つの異なる方向性をもった二段階性の動きであるという予期せぬ結果が得られた。また、二段階の核移動の駆動力が、どちらもアクチンであることを明らかにした。しかしながら、興味深いことに、一段階目と二段階目の動きを駆動するアクチンは、異なる物性を持つことが示唆されたことから、核移動の方向性ごとに、異なるアクチンネットワークを使い分ける仕組みを植物細胞は持つことが示唆された。 核移動時に起こる液胞構造の再編の実体を明らかにすべく、透過型電子顕微鏡による詳細な観察を行った。その結果、核移動開始時には、核周辺の液胞構造の矮化や、核と移動先をつなぐ領域での間隙形成といった、ダイナミックな構造再編が起こることを明らかにした。また、この液胞構造再編もまた、アクチン依存的な現象であることを突き止めた。 また、核移動現象における液胞再編の必要性を検証し、液胞の再編が迅速な核移動に必要であることを明らかにした。また、核の形態が異常になる変異体と液胞再編に異常を示す変異体を組み合わせた二重変異体では、細胞の隅に核が引っかかって停滞してしまうことを見出した。これは、液胞構造と核形態という2つの物理的要因が、核の確実な移動に必要であることが明らかになった。 これらは、いずれも今までにない未踏の概念の確立の可能性を秘めた、重要な発見であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りに研究が進展しているのみならず、核移動現象の多段階性や、核移動における核と液胞の物理的動態の重要性など、予期しなかった成果も得られており、おおむね順調に進展していると判断して差し支えないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、①二段階の核移動を担うアクチンネットワークを構築するメカニズム、②液胞構造再編を司るアクチンネットワークを構築するメカニズムの解明を目標とする。具体的には、Arp2/3複合体やミオシンなど、アクチンネットワーク形成に関与することが知られている因子群に着目した解析を行う。これら因子の機能欠損変異体において、二段階性の核移動・液胞構造再編にどのような影響が生じるかを評価する。また、遠く離れた移動先の場所の位置情報を核がどのように認識しているかを明らかにすべく、移動先に存在するタンパク質であるsmall GTPaseの役割の解明にも取り組みたいと考えている。 これらの解析を通じて、巨大液胞という物理的障壁を持つ植物細胞内で、オルガネラを始めとする構造体の動態を担保する基本原理の解明への先鞭をつけたい。
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Causes of Carryover |
研究の進捗および方向性の変更から、次年度に研究の規模をスケールアップして行う必要が生じたため、今年度の試薬・消耗品購入量を制限し、一部、次年度に持ち越すこととした。また、参加予定の学会を、情報管理の都合からとりやめ、次年度の別学会参加へと変更した。次年度、活発に学会参加し、精力的に研究成果を発信する予定である。また、得られた予想外の成果も含め、複数報の論文として成果発表する方針に切り替えたため、次年度、論文投稿料などの当初計画外の支出が必要となる。
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