2023 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of primary cilia dynamics
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22K06297
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
斎藤 祐見子 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 名誉教授 (00215568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 勇喜 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 特定准教授 (80736421)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Gタンパク質共役型受容体 / 一次繊毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
一次繊毛は細胞から一本突出する特殊な細胞小器官である。その微小な構造には「選ばれた」タンパク質が高密度に集積し、外界の環境を鋭敏かつ迅速にキャッチするハブセンターとして働く。神経細胞の一次繊毛の場合、その長さが一定の範囲を越えると、樹状突起の複雑性に加え、軸索丘の形態・機能が変化することが示されている。しかし、長さが変わった繊毛において、そのセンサー機能(外部シグナルに対する反応性)は一体どうなるのだろう?この点について、ソニックヘッジホッグ以外の一次繊毛局在型受容体に着目した研究はほとんど見当たらない。私たちは、一次繊毛が関与する摂食・情動の理解を目指し、神経細胞の一次繊毛膜上に局在する限られたGタンパク質共役型受容体 (GPCR) の一つ、メラニン凝集ホルモン受容体1 (MCHR1) に着目した研究を行っている。その成果の一つは、in vitroばかりかin vivoにおいても”神経細胞がつくるMCH(食欲・情動行動の調節物質)が神経細胞繊毛膜に局在するMCH受容体に働きかけ、繊毛長を短くする” というダイナミックな現象を初めて見出した。さらに、繊毛局在型MCHR1モデル細胞とRNA-seqを組み合わせ、繊毛縮退に到る新しい鍵分子及びその下流における連携シグナル経路も明らかにした。2023年度はこの有用なモデル細胞を活用することで、繊毛長変化(伸長、短縮、短縮からの回復)に伴う繊毛センサー機能との関係性を詳しく解析し、新しい知見を得た。さらに、他の繊毛局在型GPCRによる繊毛長変化と機能の関係についても着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに繊毛局在型MCHR1発現細胞を用いることで、伸長経路の異なる繊毛伸長モデル系を3種類確立している。この『MCHR1が存在する、形態的には同じに見える長い繊毛』であっても、MCHR1を介したシグナル感受性・MCHによる繊毛縮退機能が大きく異なることは既に報告した。今回は繊毛長を自由自在に操ることにより、以下の結果を得た:[1] MCH-MCHR1軸の機能に加え、血清添加による初期反応と繊毛縮退法も3種類の伸長した繊毛ではそれぞれまったく異なることをライブイメージングにより明らかにした。一般的にはシグナルハブセンターである繊毛が長くなればそのセンサー機能が亢進すると考えられ、そのことを裏付ける報告は多い。ところが、この研究により、伸長に伴い、かえってセンサー能力が喪失してしまう経路の存在を初めて示すことができた。[2] MCH添加により繊毛長が30-40%程度縮退した場合のセンサー能について検討した。その結果、外部刺激により減弱するシグナル系ばかりではなく、逆に大きく亢進するシグナル経路があることを見出した。[3] MCH添加による繊毛縮退後、MCHを除去して一晩置くと繊毛長は元の長さまで回復する。しかし、見た目の長さは回復しても、MCH-MCHR1を介する諸機能はほとんど回復していないことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
MCHR1以外の3種類の繊毛膜局在型GPCR発現細胞において、それぞれのリガンド添加により、繊毛長が変化することを見出している。そこで、MCHR1発現細胞とこれらの3種類の繊毛動的変化との類似点・相違点、相関関係を解析する。更に、わたしたちは繊毛動態がアミロイドベータ1-42添加により変動することを明らかにしている。そこで、その変動が繊毛センサー能とそれに続く細胞機能にどのような影響を及ぼすのかも検討したい。本研究で得た繊毛動態変化とセンサー能との関連性は、一次繊毛の形態ばかりではなく、そのセンサーとしての諸機能を調べるツール開発に繋がる可能性がある。
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Causes of Carryover |
2024年度に実施予定の諸費用を概算したところ、配分額をかなり超えることが予測された。そのため、次年度使用分として今年度分と合算使用としたい。合算した予算は主に各種試薬および英文校閲費用として使用する予定である。
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