2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K06301
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
二宮 裕將 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (40514237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有泉 高史 玉川大学, 農学部, 教授 (30286166)
石嶺 久子 藤田医科大学, 医学部, 助教 (90736737)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 外胚葉 / 両生類 / 上皮細胞極性 / 紡錘体の配向 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脊椎動物の発生において三次元的な胚体の組織構築の起点である外胚葉のシート構造形成の意義を明らかにするため、解析を進めている。研究対象としては、比較的大型・水中で発生するため扱いやすく、外胚葉の構造が近縁の有尾類(単層)と無尾類(重層)で異なる、等の利点がある両生類胚を用いている。 上皮細胞には頂端面と基底面の細胞極性があり、この極性により細胞集団として一定のシート層構造を維持している。我々の以前の研究では、上皮細胞極性維持に働くlgl と aPKC を外胚葉に過剰発現させ、極性を攪乱した場合、外胚葉組織が分厚い重層構造を形成することを報告している(Ninomiya and Winklbauer 2008)。この重層化の仕組みとして、上皮細胞の有糸分裂方向を調べたところ、通常は頂端面に対して垂直に配向している紡錘体が、lgl と aPKC を外胚葉に過剰発現している細胞では、よりランダムな向きになっていることが分かった。このことから、外胚様組織重層化の仕組みの一つとして、有糸分裂方向の無秩序化が示された。 そしてlgl と aPKC の過剰発現による重層化の程度をイモリ胚とツメガエル胚で比較したところ、イモリ胚の外胚葉組織は局所的に大きな肥厚を示し、ツメガエル胚の外胚葉組織は全体的で小さな肥厚を示した。この違いの理由として、イモリ胚の非上皮化細胞が元の場所に留まり続けるのに対し、ツメガエル胚の非上皮化細胞が外胚葉基底面側で拡散することが示唆された。 さらに背側外胚葉を重層化した場合の尾芽胚形態形成への影響を調べたところ、体軸伸長の弱い阻害、および頭部神経系の形態異常が確認できた。 以上の結果より、外胚葉において一定のシート層構造を維持することが、脊椎動物胚の形態形成の再現性を高めるのに重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたアカハライモリおよびツメガエル外胚葉細胞に対するlgl と aPKC の過剰発現実験を遂行し、外胚葉組織の重層化の仕組み、程度、および胚形態形成への影響をほぼ全て評価した。よって、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト組織形成に対する外胚葉重層化の影響を調べるため、lgl とaPKC 遺伝子の過剰発現により、ヒトiPS細胞を重層化し、その細胞分化への影響を解析する。また、近年私が開発したヒトiPS細胞からの組織伸長系(Ninomiya et al, 2020)の組織伸長に対する上皮組織の影響(ヒト組織形態形成に関する上皮組織の働き)を調べる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:新しいプロテオミクスの機器が2024年度に大学へ導入されることが決定した。そこで、より質の高い解析を遂行するため、プロテオミクスなどの分子生物学的解析をあえて後回しにした。他の解析は、プロテオミクス解析に比べ資金を要しないため、次年度使用額が生じた。また、新型コロナウィルスの影響で制限されていた人の流れを伴う活動(学会発表や研究計画の打ち合わせなど)の分の資金がまだ残っている。 使用計画:比較的多額の資金を要するプロテオミクスなどの分子生物学的解析を遂行する。制限がほぼ解除された学会発表等の活動を積極的に行う。
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