2022 Fiscal Year Research-status Report
共生細菌がつくるプラナリア有性化抑制因子の同定とその意義の解明
Project/Area Number |
22K06304
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
関井 清乃 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (50786358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 一也 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (50360110)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プラナリア / 生殖様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
扁形動物プラナリアには、無性生殖と有性生殖を使い分けるものがいる。この生殖様式の転換を可能にしているのが、プラナリアが全身に有する分化多能性幹細胞であり、ここから生殖細胞を含めたすべての組織を形成できる。しかし、無性個体は分裂後、脳も含めすべて再生するのに、生殖細胞・器官だけは作らず、無性状態を維持し続ける。 プラナリアは実験的に無性個体を有性個体に転換させる系が確立されている(有性化)。プラナリアのクローン集団(Dugesia ryukyuensis OH株)を用いた先行研究で、遺伝的なバックグラウンドが同じであるにもかかわらず、無性個体と有性個体の細菌叢は大きく異っており、また、抗生物質処理によってプラナリアの有性化が一部進行することから、プラナリアが無性状態のままでいる仕組みに共生細菌が関与していることを明らかにし、denovo276を同定した。denovo276は宿主の多能性幹細胞の分化を抑えて卵巣が形成されないようにしている。腸内細菌であることからその仕組みには何らかの代謝産物が関与していることが考えられ、本研究ではこれを「有性化抑制因子」としてその同定をめざす。 化合物の実体としては既知物質および未知物質の両方の可能性が考えられる。そこでどちらの可能性も想定して因子同定のアプローチを行えるように、2022年度はまずdenovo276のin vitro培養系の確立を試みた。抽出方法や培地の種類、培養条件の検討を重ねながら、PCRおよびDNAシーケンスによる配列解析で確認することで、無事にdenovo276の単離・培養に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では抗生物質処理によって卵巣が誘導されたプラナリアを用いて、「無性個体に多く存在し、かつ抗生物質処理でdenovo276が除かれた個体では減少している代謝産物」という基準から、denovo276が産生する有性化抑制因子の候補物質を見つける予定であった。しかし代謝産物を網羅的に解析するメタボローム解析では、プラナリア由来の化合物も多く検出されることが予想され、それらの中からいかに候補化合物を絞り込むかが重要な課題であった。 腸内細菌がうまく培養できるかは運によるところも大きいが、幸いにも本研究ではdenovo276を単離・培養できたおかげで、それらの培養上清のみを解析の対象とすることができ、有性化抑制因子と期待される化合物の候補が絞り込みやすくなった。また因子が同定できなくても、denovo276が単離・培養できたおかげで、それらが宿主に及ぼす影響をいろいろと実験的に調べることができるようになった。 これらのことから総合して、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は単離したdenovo276についてメタボローム解析をおこない、解析で絞り込まれた候補化合物をプラナリアに与えて、抗生物質処理で誘導される卵巣がキャンセルされるかどうかで卵巣抑制効果を評価する予定である。また因子が未知物質である可能性も考慮し、単離・培養したdenovo276が産生する物質を天然有機化合物の分離・精製法を用いて分画していき、卵巣分化抑制効果のある物質の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
2022年度にメタボローム解析を行う予定をしていたため、その分の予算を計上していた(810,000円)。当初は抗生物質処理した(denovo276が除菌された)プラナリアとしていないプラナリアと比較することを計画していたが、denovo276の培養が成功すればそれらが産生する化合物のみを対象に解析でき、プラナリア由来の化合物を除外できるため、まずはdenovo276の培養を試みた。その結果、うまく単離・培養することに成功したが、2022年度中のメタボローム解析の実施には間に合わなかったため、その分の予算を2023年度に回した。 2023年度は予定通りメタボローム解析を行い、得られた候補化合物について、それらをプラナリアに与え、卵巣抑制効果を検証する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Sex-inducing effects toward planarians widely present among parasitic flatworms2023
Author(s)
K. Sekii, S. Miyashita, K. Yamaguchi, I. Saito, Y. Saito, S. Manta, M. Ishikawa, M. Narita, T. Watanabe, R. Ito, M. Taguchi, R. Furukawa, A. Ikeuchi, K. Matsuo, G. Kurita, T. Kumagaya, S. Shirakashi, K. Ogawa, K. Sakamoto, R. Koyanagi, N. Sato, M. Sasaki, T. Maezawa, M. Ichikawa-Seki, and K. Kobayashi
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Journal Title
iScience
Volume: 26
Pages: 105776~105776
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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