2022 Fiscal Year Research-status Report
動物個体間の階層関係を規定する、攻撃制御遺伝子・神経基盤の解明
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22K06309
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 健一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60895465)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 攻撃行動 / 社会性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の申請時点で私は、ショウジョウバエの攻撃行動を抑制する遺伝子「nervy」を同定していた。nervy変異体では野生型と比べて高い攻撃性が見られるが、nervy遺伝子がどのように攻撃行動を抑制するかは不明であった。本年度は、ハエ脳内でnervy遺伝子を発現し攻撃制御に寄与することが見出された特定の細胞群(nervy陽性オクトパミン陽性細胞)に着目し、攻撃抑制メカニズムの解明を進めた。 上記の「オクトパミン」は攻撃行動を正に制御する神経伝達物質として知られていたことから、nervy陽性細胞におけるオクトパミン量の変動が攻撃性の調節に寄与する可能性が考えられた。そこでまず、ハエ脳内のオクトパミン量を生化学的に分析したところ、野生型とnervy変異体の間で有意な差は認められなかった。次に、脳全体でなくnervy発現細胞(脳神経細胞の0.1%を占める)における局所的な働きを想定し、nervy陽性オクトパミン陽性細胞での遺伝子ノックダウンによりオクトパミン合成を阻害した。その結果、攻撃行動の回数に顕著な変化は見られなかった。これらの結果から、nervy陽性細胞においてオクトパミンが攻撃制御の実体として寄与することの示唆は得られなかった。 nervy遺伝子と協調して働く攻撃制御因子を探索する目的で、野生型またはnervy変異体からオクトパミン陽性細胞を単離し、RNA-seq解析により遺伝子発現パターンの詳細な比較を行った。nervy変異体における発現量が野生型と比べて有意に増加または減少した候補遺伝子群に着目し、nervy陽性オクトパミン陽性細胞特異的ノックダウンを施したところ、攻撃性を有意に変化させる遺伝子を3つ同定することに成功した。これらの遺伝子群は、ハエ脳内のnervy陽性オクトパミン陽性細胞において、nervy遺伝子と協調的に働くことにより個体の攻撃性を調節すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請当時に私が同定していたショウジョウバエnervy遺伝子に関して、協調的に働く分子実体(神経伝達物質並びに遺伝子)を解明し、攻撃抑制メカニズムの理解を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)Nervyタンパク質と相互作用して協調的に働く因子群を探索するとともに、(2)ショウジョウバエ脳内におけるnervy陽性オクトパミン陽性細胞のサブタイプを詳細に解析し、攻撃制御メカニズムの分子・細胞・回路レベルでの解明を進める。
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Causes of Carryover |
一部実験で予想に反する結果が得られ、当初の実験予定を変更したため。
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Research Products
(4 results)