2023 Fiscal Year Research-status Report
バナジウム除去海水環境下で飼育したホヤの生理学的変化の網羅的検証
Project/Area Number |
22K06317
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
植木 龍也 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (10274705)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホヤ / バナジウム / 海水 / 金属濃縮 / 金属除去 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではバナジウムを除去した海水環境でホヤを飼育することで起こる生理学的変化を網羅的かつ多角的に解析することを目的とする。本年度は (1)前年度に開発した手法を用いたバナジウム除去海水環境でのホヤの飼育、(2)ホヤ幼若体からのRNA抽出と網羅的配列解析、(3)バナジウムの有無に関連して発現変動する遺伝子の選択とクローニングを行った。具体的には、項目(1)として代表的なバナジウム濃縮種であるスジキレボヤの幼若体の飼育を繰り返し行った。人工授精した幼生をプラスチックシャーレに固着させ、変態させた後、約1ヶ月間飼育した。飼育には人工海水にバナジウムを添加したものと添加していないものを用意した。幼若体はプラスチックシャーレ中で現有の恒温インキュベーターに入れて飼育した。項目(2)として、バナジウムを添加した幼若体と添加していない幼若体のそれぞれ4バッチずつ用意した。各バッチごとに約15個体のからRNAを抽出し、網羅的配列解析(RNA-seq)を行った。RNA-seqはシークェンス決定まで外注し、現有PCワークステーションを用いてデータ解析を行った。標準クラスターとしてスジキレボヤ血球2バッチと自然海水で飼育したスジキレボヤ幼若体2バッチから作成した36094遺伝子クラスターを用いた。項目(3)として、バナジウムを添加したものと添加していないものとの間で発現が変動する遺伝子を約500個見出した。とくに細胞外マトリックスのタンパク質、酸化還元酵素タンパク質、脂質代謝系のタンパク質、補体系のタンパク質、糖鎖修飾酵素タンパク質などが見出された。これらの遺伝子について順次、塩基配列およびコードされるアミノ酸配列の確認とPCRプライマーの設計、シミュレーションを行った。一部は試行的にPCRを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 おおむね順調に進捗している。ホヤの飼育とRNA-seq解析は予定通り実施できた。バッチ間のばらつきが大きかったため、発現変動する遺伝子の選択は単純な統計処理ではなく加重平均をとってリスト化することで解決した。当初予定していたリアルタイムPCR解析は準備に時間がかかったため最終年度にかけて実施することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ当初予定通り推進する。最終年度の研究期間で、(1)リアルタイムPCRによる発現変動の確認、(2)ホールマウントin situハイブリダイゼーションによる組織・器官特異的発現の確認、(3)組換えタンパク質の作製と機能解析、(4) 逆遺伝学的機能解析を実施する予定である。なお、項目(1)および(2)に関しては前年度に引き続いて低バナジウム条件下でホヤの飼育を行なって材料を得る。項目(3)は大腸菌を用いた組換えタンパク質の作製を予定している。既知遺伝子および機能ドメインとのホモロジーがあればそれに基づいて機能解析を行う。ホモロジーの認められない遺伝子についても金属結合能に関する 機能解析をできるかぎり行う。項目(4)は、幼生期に顕著な変動が観られた遺伝子について、受精卵へのTALENもしくはCRISPR-cas9導入による逆遺伝学的機能解析を実施する。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進捗したが、消耗品の購入額などにより若干の余剰が生じた。余剰分は次年度の助成金(物品費)と合算し、PCR試薬およびin situハイブリダイゼーション試薬(物品費)として使用する予定で ある。
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