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2022 Fiscal Year Research-status Report

チョウの食草選択的産卵行動における「食草品質検査器官」としての産卵管の役割の解明

Research Project

Project/Area Number 22K06329
Research InstitutionJT Biohistory Research Hall

Principal Investigator

宇賀神 篤  株式会社生命誌研究館, その他部局等, 研究員 (00747032)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords食草選択 / 化学感覚 / チョウ / Odorant-binding protein
Outline of Annual Research Achievements

チョウの仲間は,自身は花蜜を摂取するのみのメス成虫が,幼虫の食草となる特定の植物種を正確に認識し産卵する能力を持つ。植物の匂いや色を手掛かりに飛来したメス成虫は,前肢で葉の表面を叩く「ドラミング」を経て,産卵へと至る。ミカン科植物を食草として利用するナミアゲハを用いた先行研究から,「メス成虫がドラミングの際に前肢先端の味覚感覚子において植物化学物質を受容し,食草か否かの識別をしている」ことが明らかとなっている。しかし,前肢にミカン葉を提示した際でも,産卵管の突き立ては高頻度に生じるものの必ずしも卵の産み付けに至るわけではない。前肢が果たす役割はあくまでも食草か否かの識別であり,最終的な産卵箇所・産卵可否の決定には別の器官からの情報が鍵となると考えられる。
研究代表者は,2021年に出版された学術論文の中でナミアゲハの化学感覚関連遺伝子の一部が前肢と産卵管に共通して発現することを報告している。産卵管は卵の産み付けの直前に植物に触れる。本研究では,産卵管が単なる「卵の産み付け装置」ではなく「食草の最終品質検査器官」として機能する可能性を想定する。
2022年度は産卵管が化学感覚器として機能しうるのか検討するために,化学感覚子の探索と化学感覚関連遺伝子群の発現パターンの調査を実施した。①味覚感覚子の特徴を有する感覚子が産卵管の辺縁部に局在すること,②一部のOdorant-binding protein (OBP)遺伝子が産卵管選択的に発現することが明らかとなった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

途中で研究室スタッフに健康上の問題が生じ,一時的に研究の実施が困難となった。現在は状況が好転している。

1. 化学感覚子の探索
チョウの産卵管を構成する主な組織は,Papilla analis (Pa)と称されるクチクラからなる一対の外皮とその中の卵管である。通常は腹部に収納されているが,ドラミングによる食草認識の後に腹部を屈曲させた際に露出する。Paの表面を高精度のデジタル顕微鏡を用い観察した。Paに分布する大多数の感覚子はソケット状の基部を持っており,これらは機械感覚子と考えられる。一方で,先端に穴が1つ空いている感覚子が10本程度観察された。これは味覚感覚子の典型的な構造である。このタイプの感覚子はPa辺縁部の産卵に際して植物に触れる箇所に限局していることから,産卵の際に何らかの植物化学物質を受容している可能性が考えられる。
2. 化学感覚関連遺伝子群の発現パターン
研究代表者が過去に実施した羽化直後の未交尾メスを用いたRNA-seq解析結果をもとに,Gustatory Receptor (GR)遺伝子とOBP遺伝子のうち産卵管選択的な発現を示すものの探索を実施した。交尾後にメスの行動や生理状態が「産卵モード」に変化することは様々な昆虫で知られている。飼育下のナミアゲハでは,交尾後3日程度経過するとミカン葉に対して激しく反応する。そこで,未交尾羽化当日・未交尾羽化後4日・交尾済羽化後4日(羽化翌日に交尾)の3群を用意し,前肢・触角・口吻・産卵管を対象にリアルタイムPCRで発現量比較をした。GRについては産卵管選択的な発現を示すものは確認できなかった一方,OBPのうち2遺伝子が産卵管で有意に高発現していた。そのうち1つは羽化後経過日数と交尾経験によって発現が上昇する傾向が観察された。

Strategy for Future Research Activity

1. OBPの発現解析
産卵管選択的に発現する2つのOBP遺伝子について,その発現箇所が形態的な味覚感覚子と一致するか検証する。先行研究において,前肢と産卵管とで共通して発現するOBP遺伝子が報告済みである。これら共通して発現するOBPとの局在関係についても多重蛍光in situ hybridizationにより解析をする。OBPは化学物質の受容体への結合を補助する役割を担うと考えられている。また,複数の異なるOBPがヘテロマーを形成し相互作用する化学物質のレンジを変化させることも一部で知られている。産卵管と前肢におけるOBPの発現プロファイルの共通点と相違点を明らかにすることが重要である。
2. 行動実験系の確立
形態と遺伝子発現パターンから,産卵管が何らかの化学感覚器としての機能することは間違いないであろう。しかし,受容した情報が産卵に寄与するか否かは不明である。以下のような行動実験により,産卵管の寄与を検証したい。
片面にミカン葉抽出物を塗布した模造葉を交尾済みのメス成虫に提示する。表を前肢でドラミングさせた場合,ミカン葉の成分を認識して腹部を屈曲させ,産卵管が模造葉の裏側に触れる。このとき裏面に何らかの化学物質(たとえば苦味物質)を塗布しておくことで産卵が抑制されるのであれば,産卵管からの化学感覚入力が卵の産み付けに寄与すると主張することができる。実際には,実験者の都合よくナミアゲハに葉の一面だけを触らせることが困難であり,実験系の確立が必要となる。

Causes of Carryover

進捗状況欄に記載の通り,研究室に不測の事態が生じ,一時的に研究遂行が困難となった。そのため,予定していた大規模解析が実施できず,次年度使用額が生じた。研究室の状況が改善されたため,2023年度に後ろ倒しで実施する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2023

All Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Presentation] Figure 1のためのデータ解析:チョウの味覚関連遺伝子の機能解析のために2023

    • Author(s)
      宇賀神 篤
    • Organizer
      第67回日本応用動物昆虫学会大会
    • Invited

URL: 

Published: 2023-12-25  

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