2023 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム「改編」とゲノム「安定維持」を両立可能とさせる分子メカニズム
Project/Area Number |
22K06336
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
田中 誠司 高知工科大学, 理工学群, 教授 (50263314)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ゲノム安定性 / ゲノム改変 / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゲノム改変と安定維持を両立させているモデル領域とした出芽酵母CUP1領域について、そのコピー数変動メカニズムを明らかにすることを目指している。 前年度の解析結果より、1. CUP1コピー数増加には、a) DNA2本鎖切断修復に働く非相同末端結合は関係ないが、主に相同組換えが関与することが強く示唆された。また、b) RNAループ解消に関わるとされるRNaseHとヘリカーゼの変異が顕著な影響を示したことから、ⅰ)過剰な銅イオンの存在により誘導される強力な転写と、複製フォークが衝突することで、本領域にDNA2本鎖切断が生じ、ⅱ)その修復過程である相同組換えがずれて起きることで、コピー数が変動する. というモデルが得られた。 このモデルをさらに検証するために、2本鎖切断の発生を検出する目的で、リンカーライゲーションとその配列をプライマーとして用いたPCRを行ったが、うまく検出することはできなかった。その理由として、・2本鎖切断の発生頻度が想像以上に低いこと・2本鎖切断が起きている領域がかなり広く、ある程度特定することが困難である可能性がある。これらの問題を解決できるかどうかはわからないが、鋳型DNAを制限酵素で処理することで特定の領域に絞り込んで解析することが可能になると考え、現在解析を進めている。 2. CUP1領域内に存在するとされる複製起点については、出芽酵母パブリックデータベースであるSGDで示された本領域内複製起点ARS810、複製起点の情報をまとめたデータベースであるoriDBに記載された領域はともに、複製起点の活性を示さないことがわかった。また、CUP1領域自体も複製起点の活性を示さないことがわかったが、驚くことに、CUP1領域が2コピー以上存在すると、活性を示すことがわかった(CUP1領域の末端部がつながることで活性は表出しているわけではないことも確認済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CUP1領域のコピー数増加について、 1. 関与するトランス因子群については、確定的な結果がほぼ得られた。 2. 一方、シス側の因子である複製起点について、これまでの一般的な理解とは異なる新たな特徴を持つという、全く予期しなかった興味深い結果が得られた。その特徴を明らかにするべく解析を進め、現在までにその活性に関わる領域を絞り込むことができた。 3. 解析実施にあたり、当初より大きな困難が予想されていたコピー数減少の解析について、その解析系を着想。解析開始できたことは、研究目的達成のための大きな一歩となったと考えている。 以上の点より、概ね順調に推移していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 領域特異的なコピー数増加モデルの証明を引き続き目指し、以下のような方向で研究を推進する。 ・コピー数増加について、精度の高いデータの取得 ・該当領域の複製フォーク進行方向や複製起点の解析と同定 ・転写が十分条件となるか否かの決定 ・dsbの直接的な検出 2. 領域特異的なコピー数減少を理解するための研究の推進。 ・領域特異的なコピー数減少を検出するための系の構築(詳細は省略、複数の方法を着想しており、それらをまず全て構築し、比較検討する)
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