2022 Fiscal Year Research-status Report
車軸藻類クレブソルミディウムを用いた、植物の乾燥ストレス情報伝達経路の起源の解明
Project/Area Number |
22K06354
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀 孝一 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70453967)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 乾燥応答 / ストレプト藻類 / クレブソルミディウム / 陸上進出 / AREB / ABI5 / ABI3 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は植物が陸上に進出した要因を明らかにするために、陸上植物の側系統群に属するストレプト藻類クレブソルミディウムのゲノム解析に基づき、陸上環境への適応機構の進化過程を明らかにしてきた。その中で陸上植物においてアブシジン酸シグナル伝達経路であり乾燥応答に関与するbZIP型転写因子AREBがクレブソルミディウムにも存在し、乾燥応答に関与していることを明らかにした。本研究は陸上植物の乾燥およびABAシグナル伝達機構の成立過程を明らかにするために、クレブソルミディウムにおける乾燥情報伝達機構を明らかにすることを目指す。本年度は陸上植物のABAシグナル伝達機構においてAREBと共同して正の調節因子として作用するABI3転写因子のクレブソルミディウムの類似した4つの転写因子について乾燥応答遺伝子への関与の解明を進めた。シロイヌナズナとゼニゴケのABI3遺伝子、クレブソルミディウムの類似転写因子およびシロイヌナズナとクレブソルミディウムのABI3遺伝子のキメラタンパク質をエフェクター、クレブソルミディウムの乾燥応答遺伝子プロモーターの下流に接続したGUS遺伝子をレポーターとして、ベンサミアナタバコを用いたレポーターアッセイによりに解析を行った。その結果、これらの転写因子は乾燥応答遺伝子に結合することが推定されたが、標的遺伝子の転写を活性化せず、むしろ抑制することが示唆された。したがって、クレブソルミディウムが分岐するより前の段階で、AREBが乾燥応答の正の調節因子として機能するようになった一方、ABI3はそれより後の段階で乾燥応答を正に誘導に関与することを明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、陸上植物においてAREBと共同し乾燥応答に関わる正の制御因子であるABI3の類似たんぱく質のクレブソルミディウムの類似たんぱく質について解析を進めた。その結果、クレブソルミディウムが分岐するより前に獲得されており、乾燥応答遺伝子に対して結合する可能性が高いことを示す事が出来た。その一方で、クレブソルミディウムのABI3類似たんぱく質は標的遺伝子を活性化しなかった事から、乾燥応答に関わる正の制御因子は進化の過程で、初期にAREBが乾燥応答に関与するようになり、ABI3の乾燥応答に対する正の制御はクレブソルミディウムの分岐後に付加され、陸上植物型の乾燥応答が形成されていった事が期待される。このように乾燥応答の成り立ちを考えるうえで、大きな知見が得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗を踏まえ、前年度達成できなかったKnbZIP転写因子の活性に影響するサイトの同定を進める。また前年度解析を行ったABI3類似たんぱく質は、KnbZIPsに作用して乾燥応答を制御する可能性が低いと考えられるため、他の制御因子に関して引き続き探索を進める。
|
Causes of Carryover |
KnbZIPsの修飾の生化学的な解析については、KnbZIPsの修飾についてまだ十分な基礎的な知見が得られなかったため、タンパク質修飾の解析に必要な試薬類についてはまだ発注を見合わせている。KnbZIPsの修飾について引き続き解析を進め、翌年度に生化学的な解析の開始に合わせて必要な試薬の発注を行う予定である。
|
Research Products
(4 results)