2022 Fiscal Year Research-status Report
海浜環境への進出初期段階におけるアブラナ科野生植物ジャニンジンの適応進化
Project/Area Number |
22K06355
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岩崎 貴也 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (10636179)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ゲノム / 野生植物 / 海浜環境 / アブラナ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、ロングリードシーケンスによる比較ゲノム解析と、ストレス条件下での栽培実験・遺伝子発現解析のための栽培環境の確立を目的としていた。まず、安定した栽培環境の確立では、ジャニンジンの海浜系統、林床系統の両方について、保存していた種子からの栽培を改めて行い、海浜系統が林床系統に比べて葉や茎が大型になること、海浜系統がロゼットを形成せず、春化処理無しに花芽を形成すること、林床系統の花成には4℃で2ヶ月の春化処理が必要であることなどを確認した。これらの結果は、本研究で着目している海浜系統と林床系統の違いが、可塑性によるものではなく、遺伝的に決まっていることを示唆している。また、比較ゲノム解析の前段階として、栽培系統が純粋な系統であることを確認するための系統判別マーカーの作成を行った。既に得られていた分布域全体でのMIG-seq解析のデータを再解析し、海浜型と林床型で明瞭に分化している領域を探索した。検出した2つの分化領域については栽培系統のDNAについてサンガーシーケンスを行い、現在の栽培系統が交雑系統でないことを確認した。さらにリアルタイムPCRによって簡易なジェノタイピングができるようにマーカー作成も進めている。最後に、純粋な系統であることが確認できた栽培2系統について、高分子ゲノムDNAの抽出に取り組んだ。市販のキットを用い、プロトコルをいくつか改変して試行錯誤することで、ロングリードシーケンスに適した十分な長さの高分子ゲノムDNAを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
栽培環境の確立と高分子ゲノムDNAの抽出方法の確立に時間がかかり、予定していたゲノム解析までを2022年度中に行うことができなかった。ただし、栽培環境は安定して行えるようになったため、2023年度のストレス実験や遺伝子発現解析は問題なく実施できる見込みである。また、高分子ゲノムDNAの抽出も安定して行えるようになったため、2023年度のできるだけ早いタイミングでゲノム解析を行う。当初の計画と比較するとやや遅れているものの、全体としては問題のないスケジュールで研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度中に実施できなかったゲノム解析については、2023年度のできるだけ早いタイミングで解析が行えるように、共同研究先との相談を密に行う。また、室内栽培でのストレス実験は予想外のことが起きる可能性があるため、こちらもできるだけ早期に実験を開始する。
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Causes of Carryover |
ロングリードシーケンスによるゲノム解析までを2022年度に行うことができず、2023年度に延期になったため、その実施に関連する費用の使用を2023年度に繰り越すこととした。2023年度のできるだけ早い段階でゲノム解析を実施し、繰り越した費用を使用する。
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