2022 Fiscal Year Research-status Report
マメ科トビカズラ属をモデルとした広域分布種と局所分布種の送粉様式の差異の解明
Project/Area Number |
22K06360
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
小林 峻 琉球大学, 理学部, 助教 (60838150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊澤 雅子 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, 館長 (10192478)
傳田 哲郎 琉球大学, 理学部, 教授 (50284948)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Mucuna / 送粉 / 哺乳類媒植物 / 広域分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マメ科トビカズラ属を対象とした局所分布種と広域分布種の送粉様式の違いを明らかにすることを目的としている。本属には3つの亜属が認められているが、このうちの2つの亜属(Mucuna subg. Macrocarpa およびM. subg. Mucuna)において、広域分布種と局所分布種がいずれも存在することが知られている。本研究では、M. subg. Macrocarpaの2種(局所:M. thailandica、広域:M. macrocarpa)および、M. subg. Mucunaの2種(局所:M. membranaceae、広域:M. gigantea)を対象として、送粉様式を解明するとともに、広域分布種については形態的、遺伝的地域差についても明らかにすることを目的としている。 2022年度は、送粉者の特定に関する調査をM. thailandicaとM. giganteaの2種について実施した。M. thailandicaはタイのDoi Inthanon国立公園において実施した。本種については送粉者と関係が深いと考えられる形質である、花の裂開する強さ、および、花蜜の量と糖度の計測も行った。M. giganteaの送粉者の特定に関する調査は西表島と小笠原諸島(父島および母島)で実施した。また、本種については花の形態とDNAの地域間比較をするために、西表島、沖縄島、奄美大島、小笠原諸島(父島および母島)でサンプリングを行った。これら2種については、送粉者の特定のための動画解析を実施している。M. macrocarpaおよびM. giganteaについては、国外の研究者と分布および開花情報に関する情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、M. subg. Macrocarpaに属し、タイのDoi Inthanon固有種のM. thailandicaの送粉様式に関する野外調査を行った。2023年2月から3月にかけて、自動撮影カメラによる訪花者の特定、袋掛け実験、花蜜量と糖度の計測、裂開に必要な力の強さの計測を行った。撮影された動画については解析を実施しているが、袋掛け実験の結果、少なくとも花が裂開しなければ結実もしないということが明らかとなった。また、タイのDoi InthanonにおいてM. macrocarpaの開花状況の観察を行った。さらに、当初は計画していなかったネパールにおける本種の分布・開花情報について、現地の研究者と情報交換を行うことができた。 M. subg. Mucunaについては、広域分布種のM. giganteaについて、計画通り2022年12月から西表島と小笠原諸島において、自動撮影カメラによる訪花者の特定調査を開始した。小笠原諸島では、赤外線センサーに反応しない昆虫などの訪花も確認するために、ビデオカメラによる撮影も実施した。また、DNAおよび花形態の比較のためのサンプリングを西表島、沖縄島、奄美大島、小笠原諸島(父島、母島)で行った。小笠原の父島と母島に設置したカメラの一部は現在も稼働中である。さらに、次年度以降に台湾で野外調査を実施するために、台湾における本種の分布情報に関する情報交換を行った。西表島において、八重山諸島固有のM. membranaceaの開花状況調査を実施した。断片的な調査であったが、開花期間がワニグチモダマと重複することが明らかとなった。 2022年度中に出版を予定していたMucuna属の送粉様式の進化に関する総説論文は、査読に時間がかかり、受理に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
各亜属の対象種について、以下の通り研究を進める計画である。 <M. subg. Macrocarpa>M. thailandicaについては、昨年度に設置した自動撮影カメラで撮影された動画、裂開に必要な力の強さ、花蜜についての解析を実施し、論文の執筆を進める予定である。M. macrocarpaについては、香気成分分析の論文の執筆を予定しているが、サンプルサイズについて検討する必要がある。今後本種の分布域を網羅して送粉様式を明らかにするために、さらなる調査地の検討をする。 <M. subg. Mucuna>M. giganteaについては、昨年度に設置した自動撮影カメラで撮影された動画の解析を行う。また、一部は引き続き設置中であるため、今後カメラを回収して解析する予定である。また、昨年度複数の島において採集したサンプルについて、DNA解析および形態計測を開始予定である。M. membranaceaeについては、自動撮影カメラを用いた送粉者の特定に関する調査を開始予定である。 このほか、Mucuna属の送粉様式の進化に関する総説論文を執筆するとともに、国際哺乳類学会議においてアジアにおけるリスの送粉者としての重要性に関する発表を予定している。
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Causes of Carryover |
西表島におけるサンプリングと送粉者の撮影を別々に実施する予定であったが、1名で実施することができたため、旅費を安く抑えることができた。繰り越した金額は、解析に必要な消耗品費の購入に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)