2023 Fiscal Year Research-status Report
カワゴケソウ科における単子葉性の平行進化:「進化しやすい形質」への転換機構の解明
Project/Area Number |
22K06361
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
厚井 聡 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60470019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相田 光宏 熊本大学, 国際先端科学技術研究機構, 教授 (90311787)
片山 なつ 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20723638)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カワゴケソウ科 / 単子葉化 / 胚発生 / 幼芽 / 長期栽培 / カワゴロモ属 / テルニオプシス属 |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物は、胚発生により2枚の子葉が生じ、その間に幼芽(茎頂分裂組織)が形成される。しかし、水生被子植物のカワゴケソウ科では、幼芽が形成されず、子葉が2枚から1枚になる進化(単子葉化)が繰り返し起こっている。本研究は、幼芽の消失と単子葉化の関連を解析することで、形質の進化的な「変わりやすさ」に対する発生拘束の役割を検証することを目的としている。 カワゴロモ属の双子葉種と単子葉種の胚発生を近縁種間で比較した結果、単子葉化に関与した細胞分裂パターンの変更点を明らかにした。一方、カワゴケソウ科の基部系統であるテルニオプシス属の一部の種(Terniopsis heterostaminata、T. savannaketensis)でも幼芽が形成されず、近縁種や姉妹群のオトギリソウ科との比較から、カワゴロモ属と同様に幼芽の消失が起こっていることを明らかにした。このことは、幼芽の消失がカワゴケソウ科内で少なくとも2回独立に起こったことを示しており、胚発生自体が進化しやすくなっていることが示唆された。カワゴロモ属と同様に、テルニオプシス属においても単子葉化が起こっているのか検証するために胚形態の観察を行ったが、観察できた種の中に単子葉の胚は見つからなかった。 遺伝子解析に必要なサンプルを実験室で供給可能とするために、カワゴケソウ科の栽培条件を検討し、トリスティカ亜科の一部の種で長期間栽培することに成功した。本条件をカワゴケソウ亜科のカワゴロモ属にも適用して栽培を試みたところ、双子葉種1種で長期栽培することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カワゴロモ属で幼芽の消失と単子葉化の関連について解析しているが、系統的に離れているテルニオプシス属でも幼芽の消失が起こったことが明らかとなった。その一方で、テルニオプシス属では単子葉種はいまのところ見つかっていない。したがって、幼芽の消失が単純に胚発生の拘束を緩めて単子葉化を引き起こした訳ではないことが示唆され、発生拘束と形態進化の関係に関する理解が進展した。一方、海外調査の準備が整わず、種子の採取ができなかった。その一方で、栽培技術が進展し、複数の種で長期栽培が可能となった。したがって、発現解析を実施するための生きた植物体を得ることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、カワゴロモ属内の双子葉種と単子葉種の間で胚発生の比較を行い、細胞分裂パターンの変更に共通性が見られるのか検証する。また、テルニオプシス属でも単子葉化が起こっているのか明らかにするために、液浸標本の種子を用いて子葉の枚数を観察するとともに、幼芽をもつ種ともなたい種の間で胚発生を比較し、胚発生パターンの変化の程度などを両属の間で比較する。また、カワゴロモ属の単子葉種でも栽培条件を検討し、遺伝子解析を行うための生きたサンプルを安定的に供給できる体制を整える。そして、ラオスでカワゴロモ属の種子を採集し、単子葉種と双子葉種における遺伝子発現の違いを解析する。
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Causes of Carryover |
海外調査(種子採取)の準備が整わなかったため、次年度実施する。
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