2022 Fiscal Year Research-status Report
発芽時の内生菌による蛇紋岩適応は植物で平行的に進化したか
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22K06362
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
西野 貴子 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 助教 (20264822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕谷 英一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 客員研究員 (00161050)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 蛇紋岩植物 / 生物間相互作用 / 微生物 / 発芽 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の生育に不適な蛇紋岩地帯への進入には、植物の生理的な適応が不可欠であり、その後、生態的な分化が生じて生態型となる。その蛇紋岩型の生理的な適応において、微生物が関与している可能性を示唆し、特に外的リスクの大きい発芽から実生の生長の段階において、微生物の作用が生態型間で異なることがサワシロギクにおいて見出されている。 こうした蛇紋岩適応における微生物作用が、サワシロギク以外の植物でも並行的に生じているのかを明らかにするため、サワシロギクと近縁な分類群であるが、別の地域の蛇紋岩土壌に生育するアキノキリンソウとミヤマヨメナ、またサワシロギクと同所の蛇紋岩土壌で生育しているが、系統的には遠いシマジタムラソウ、さらに異所の蛇紋岩土壌でシマジタムラソウと同じシソ科のイブキジャコウソウをもちいて微生物作用を明らかにする。 2022年度は材料収集と発芽条件の探索のため、文献等の情報からサンプリング地点を決め、発芽実験に必要な数の種子を集めた。また、発芽実験の条件設定を行い、さらに生育量の測定法を試して決定、予備実験を行った。 その結果、休眠打破がうまくいった分類群といかない分類群があり、休眠打破にはさらに工夫を加える必要があることがわかった。生長量の測定には分類群ごとにタイミングを変える必要があるのも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採集して実験に用いる種子の数が限られているため、予備実験で細かいところまできちんと条件設定をしていないと本実験には入れない。そのため、予備実験の果たす役割は大きく、休眠打破の方法、種子滅菌、播種のための媒体、発芽実験の環境条件、さらには生長量の測定のタイミングと方法などをそれぞれの分類群ごとに設定する必要がある。 初年度の2022年度は、その予備実験のための種子を各地から集め、上記の各検討課題について精査を行った。その結果、休眠打破がうまくいかない分類群があったり、種子滅菌で発芽能力が阻害されたり、さまざまな問題が生じているが、その都度、共同研究者だけではなく、その分類群の専門家等とも相談を行い、試行錯誤を繰り返しながら発芽実験の条件設定を精密化しつつある。特に播種のための媒体については、その後の生長量の測定方法にも影響が出るため、慎重に検討を行ってきた。 全体的には予定通りの進捗状況に近いものであるが、予備実験のうちに検討しておくべき細かな問題点がいくつか出てきているのでその解決をはかりながら、予定通りに本実験に取り組むための下準備を進めてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
全体としての課題の進行状況は計画していたものとほぼ同じである。計画でも予備実験において検討を加え確立しておくものと想定していた細部の条件等の問題点の中に浮かび上がってきたものがある。そこで、これらの問題点を条件等の検討と修正を通じてクリアしつつ、本実験での条件の確立と本実験の準備を進めていく。 本実験では、発芽時と実生生長時の蛇紋岩耐性を微生物の有無ごとに対照実験をする必要がある。そこで、種子、および土壌条件ごとに滅菌と非滅菌条件を組み合わせ、30粒前後を3-5反復で播種し、発芽、子葉展開、本葉展開の経過日数を記録する。その後、一般化線型モデルなどをもちいて解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗はほぼ順調に進んでいるが、新型コロナウイルスの蔓延のため、一部の調査、および材料の調達が十分にできなかった。そのため、次年度以降にその一部の計画を持ち越す予定に変更し、その分の予算を持ち越すことになったため。
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