2022 Fiscal Year Research-status Report
Clarifying the mechanisms of succession through belowground interactions on volcanoes
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22K06397
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
露崎 史朗 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (10222142)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地下部種間相互作用 / スキャナーボックス / 一次遷移 / 植生 / 火山 / 非破壊的測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
一次遷移、特に火山遷移、における地下部種間相互作用による遷移機構・動態の解明のためには、非破壊的な地下部の定点観測が必要である。しかし、これまで野外における地下部測定のほとんどは破壊的な方法に依存していたため定点継続観測が不可能であった。特に、土壌移動を伴う火山における噴火後の植物侵入過程を明らかにするためには、植物の地下部発達が定着に大きく寄与することが知られており、これらを非破壊的に測定し動態を明らかとすることが重要となる。非破壊的測定方法が確立できれば、定点観測でより破壊的測定では検出できない根の発生時期、発達様式、寿命等に関する新たな知見を得ることが期待される。そこで、スキャナ箱を火山噴火跡地に埋設し、非破壊的に地下部動態の経時測定を行っている。スキャナ箱は、裸地、ススキ草地およびオオイタドリ草地に設置した。設置初年度には、スキャナ箱設置の際、根茎の破損を伴うため測定には適さないことが知られているため、本年度は主にスキャナ箱の保守管理が主であるが、本年度もスキャナ箱設置の影響と、根茎発達の季節変化を得るために定期的にスキャナによる画像撮影は行っている。その結果、来年度以降には地下部の発達をまち、測定が開始できるものと思われる。また、裸地では、自然移入実生が少ない場合を考慮し、オオイタドリとススキの種子をスキャナボックスの片面に播種し、これらの発芽は順調であり、来年度以降のこれらの発芽個体を用いて地下部および地上部の成長解析に使用できる。設置した環境測定機器は、複数個が兎食等の被害を受け破損した。特に、裸地での破損が著しかった。それらを除けば、順調にデータは記録できていることが確認できた。したがって、初年度については、概ね当初の研究目的は達成できており、最終年度までには十分な成果をあげられると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の予定は、申請書通りスキャナ箱新設・種子播種と、その後の維持・管理・調整および環境測定を主に行うことであったが、これらは機器の破損や記録異常に伴うデータの欠損を除けば、概ね全て実施できた。また、機器の破損は、おもに大型哺乳類によるものだが、これらはこれまでの経験と較べても想定内であり大きな問題とはならない。ただし、裸地については、測器が動物に見つけられやすいせいか破損回数がもっとも多かった。今後、これらには目隠し等を付け加えるなどの措置を行い、被害軽減を図る。 スキャナ撮影と、その周辺の植生調査は調査毎に行った。いくつかのスキャナ箱が土壌の圧力で彎曲するトラブルがあったが、内部に発泡スチロールを埋め込み問題は解消できた。その間のデータは欠失したが、それ以外のものでは全て予定通りのスキャナ撮影が行えた。これらのデータ解析についても、最近開発された根系解析ソフトウェアARATAを使うことで、これまでより精度高く迅速な解析が行える展望を得た。特に、細根発達様式が鮮明に抽出できている。ただし、本スキャナ箱壁面の根系発達を自然に近い状態で測定するためには、土壌・根系が安定するまで待機する必要があるが、2022年11月の画像を見る限り2023年度からの画像は解析に使用できるものと思われる。素解析ではあるが、これまでの画像を見る限り、根茎の長さと直径は測定できる。これを時系列に並べれば、加入・死亡・伸長成長・直径成長が測定可能であることまでは確認できた。根茎抽出の際に、種同定について、植生調査の結果と標本観察をもとにした機械学習などを用いた自動化がどこまで可能なのかを検討している。自動化が困難な部分については、マニュアル操作に頼ることになるが、測定はむしろ自動化するよりも高い場合もあり、時間を要するが十分に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
全体として、当初の計画を大幅に変更することなく、研究は推進できると考えている。2023年度から、根茎発達様式の本格的な測定が可能になるため、スキャナ箱および設置機器の保守・管理は、極めて重要であり、これらを着実に実施する。そして、必要に応じ、測定間隔を短くし、着実に動態が定量できる画像データを蓄積する。また、土壌移動に伴いスキャナが彎曲・破損した場合に備え、スキャナ箱は多めに設置しているが、裸地において著しい数の破損を生じつつあり、今後、継続困難となる可能性があるが、その際には、裸地は補足データとして扱い、主眼をススキ草地・オオイタドリ草地の地下部動態比較の解析に切り替える。ただし、現状では、本年度の融雪直前までは、裸地においても解析に十分な測定データが得られる見込みである。解析については、本年度に試験的に撮影した画像を用いて解析可能な画像特性の抽出を試みているが、根の伸長成長ばかりでなく直径成長も測定できることが明らかとなっている。今後は、同一部位を撮影した複数画像を時系列に沿ったオーバレイ等を行い、根の寿命推定等も可能であるかを検討する。これらの情報をもとに、画像からの抽出可能変数の絞り込みを行い、それらを用いて時系列的な解析を行う予定である。同時に、画像から抽出された情報の数値化の精度を向上させることを試みている。特に、オオイタドリ草地とススキ草地では、根茎発達様式が大きく異なる徴候が検出できており、これらを解析可能な2023年度の画像を用いて確認・検証する。これらを用いて、(1)実生段階での地下部種間相互作用の定量化、(2)草本植物における非破壊的地下部動態測定法の確立、(3)地下部を介した種間相互作用による遷移機構の解明を行う。
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Causes of Carryover |
本研究において購入予定であったスキャナ箱を始めとする測定機器は、所有するものを全て使い切って設置した。主な理由は、野外消耗品は常に予備を多めに用意しており、それらを先に使うようにしていることと、円安等によりスキャナ箱本体を構成するアクリル板や環境測定機器の価格高騰が著しく、例えば、スキャナ箱は倍の価格となった。そこで、従来も測器の破損は見込んだ計画としていたが、スキャナ箱購入は、申請時の予算を大幅に超える額となるため、価格の安定と付け替えの必要な時期を待って買い控えることとした。さらに、大量発注による価格抑制を製造業者と、現在、交渉中でだが、最終年度までの補充品を購入することで抑制できることとなりそうである。 2023年度以降であるが、湿原とは異なり、特に裸地において土壌移動等によるスキャナ箱の彎曲等を始めとする設置された環境測定計器の付け替えの必要が当初の想定より多い見込みである。いずれにしても、本年度はスキャナ箱・環境測定機器の補充が必要となり、破損した機器の付け替え等には相当額が必要となることは確実である。また、旅費・消耗品いずれも高騰しているが、調査回数・消耗品購入数は増加するものと予測される。それらに本研究費を充当することで、計画に沿ったデータ取得と解析・論文作成が行える。
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Research Products
(5 results)