2022 Fiscal Year Research-status Report
遺伝的多様性と種多様性を種内集団構造によって結びつける
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22K06399
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
村上 正志 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (50312400)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 種多様性 / 遺伝的多様性 / 移動分散 / 種分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「種内の多様性が種分化を通じていかに種多様性に繋がるか」の解明に取り組んでいる。種内の遺伝的な多様性から種多様性への階層性は、生態学において極めて基本的な概念であり、集団遺伝学のモデルで予測されているが、実際の生物におけるそのスケールや遺伝子流動に対する分散制限の実際の要因は未解明である。具体的には、鳥類を対象として、COI遺伝子によるDNAバーコードに基づき、各種内の遺伝的多様性構造としてα多様度とβ多様度を計測し、その空間的な分布を解析することを計画した。本年度は、BOLD system に登録された、5,9445種(bin)、49,931地点の情報を解析途中である。なお、この数は申請時点での数(5,875種、48,044地点)からも増加しており、この増加の度合い、またその空間的な分布を解析することで、多様性の全体を推定することも計画に加える。これまでの解析では、全球で記録されているDNAバーコード配列について、スケールを変えた全球のメッシュごとにα多様度を算出し、同時にサンプル間の総当りでの遺伝的な違い(塩基置換数)と空間的距離の関係の傾きをβ多様度として、種ごとにこれらの関係を解析を進めている。β多様度は鳥類の分類群ごとに異なっており、特に各種の分散能力がこの関係に影響している。この関係自体は自明といえるが、この効果がさらに、アルファ多様度とどのように関わるか、さらに分析をすすめる。また、ここではβ多様度に対する空間的距離に加えて分散の障壁となる、水域と山域の効果を確かめている。これらの成果は、2023年度中に学術論文として発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サンプルの収集に、予定よりも遅れが生じている。2023年度、精力的にサンプル収集に務めることで、遅れを取り戻し、研究成果につなげたい。 既存のデータに基づく解析は、順調に進捗しており、今年度中に成果を学術論文としてまとめ発表する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、既存のデータに基づく解析を継続し完結するとともに、あらたに日本の島嶼において、鳥類各種のバーコード配列を取得し、遺伝的多様性を実測する。ここでは、既存のデータ解析から予想される、島での空間的な遺伝子流動の制限の効果を実証することを目的とする。具体的には、日本列島周辺の島嶼、5箇所を選定して野外調査により、少なくとも鳥類種20種の遺伝的多様性を測定する。そのためには、各島で最低限20個体からの遺伝情報の取得が必須である。遺伝情報は、各種鳥類の脱落羽根から取得する。これらのサンプルについて、バーコード領域COIの配列を取得して解析する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当方の会計処理ミスにより生じたものである。一部伝票登録の際に、二重登録処理を行ってしまったもので、少額であるが残額が生じた。
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Research Products
(1 results)