2022 Fiscal Year Research-status Report
Sex-biased dispersal in a monogamous mammal: does mating systems affect dispersal patterns?
Project/Area Number |
22K06410
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
井上 英治 東邦大学, 理学部, 准教授 (70527895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60285690)
塚田 英晴 麻布大学, 獣医学部, 教授 (60343969)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 一夫一妻 / 哺乳類 / 分散 / タヌキ / 糞DNA / イヌ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、一夫一妻の哺乳類の分散様式の性差を明らかにし、配偶様式との関連を明らかにすることである。一夫一妻の哺乳類の中でも、鳥類同様にオスも子育てをするイヌ科に属するタヌキを対象とし、タメ糞場から採取した糞を用いてDNA解析を行い、分散様式を解明することを目指している。 今年度は、まず、DNA解析に用いるマイクロサテライトマーカーの開発、選抜を行った。次世代シーケンス解析で得ていたマイクロサテライトを含むシーケンスデータを用い、プライマーを設計し、調査地の1つである宮城県出島の試料で遺伝的多様性の高かった領域を選抜した。その後、解析効率を上げるため、複数の領域を同時に増幅するマルチプレックスPCRの系を作成した。前年度までに確立していた既報のプライマーを用いて複数座を同時にPCRする系も含め、DNA解析ができる実験系が整った。次に、確立した系を用いて、調査地の1つで研究開始前にサンプルを収集していた出島の試料を用いて、DNAによる個体識別を行った。149サンプルの解析を行い、個体識別を行った結果、2018年に採取した試料では28個体が、2020年に採取した試料には34個体が含まれることがわかり、両年とも性比がおよそ1対1であることが明らかとなった。さらに、DNA標識再捕獲法を用い、およそ60個体のタヌキが出島にいると推定された。 さらに、本研究からDNA解析用の試料収集を始めた横浜市こどもの国において、およそ50カ所のタメ糞場からタヌキの糞の収集を行った。1年を通じて275サンプルを収集し、とくに、親の行動圏から分散した後のサンプルだと考えられる2月と3月のサンプルを49サンプル採取できた。現在、これらのサンプルについて、DNA抽出を開始し、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、DNA解析を行う実験系の確立を行えた。研究開始前に、一部、実験系の確立を行っていたが、遺伝的多様性の低い領域も含まれていた。今回の実験系の確立で、遺伝的多様性の低かった領域を除いた解析が可能となり、簡便に大量のサンプルの解析が行える系が整った。また、その系の一部を用い、すでに試料を収集していた宮城県出島のサンプルで糞DNAを用いた個体識別を行い、ある程度の割合のサンプルで個体識別ができることを確認できた。今後、確立した系ですべての領域の解析を行うことで、分散様式の性差の解析をすることが可能だと考えられる。さらに、今年度、試料収集を予定していた横浜市こどもの国で、ほぼ予定通りのサンプル数を収集することができた。以上のように、ほぼ当初の計画通り研究は進められており、進捗状況は概ね順調だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに試料を収集できている宮城県出島および北海道苫小牧のサンプルを用い、今年度確立した系を用いて、DNA解析を進める予定である。また、横浜市こどもの国でのサンプル収集とDNA解析を進める予定である。さらに、出島で行った個体数推定については英語論文として投稿中であるので、その出版を目指す。
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Causes of Carryover |
大きな要因は、8月に交付が決定した研究基盤整備のための独立基盤形成支援の経費を今年度だけでなく、次年度にかけて使用する計画にしたためである。現在、研究に必要な最低限の機器は揃っているが、一部、古い機器もあり故障のリスクもあるので、その辺りを見定め、本研究プロジェクトに支障が出ないように機器の購入を進める予定である。それに加え、研究開始前にマーカー開発にかかる実験を進められていたため、そのための経費(消耗品)を抑えることができた。次年度以降、一部他の経費から補填することを検討していたDNA解析に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)