2022 Fiscal Year Research-status Report
視覚皮質空間周波数チューニングの最適化における細胞種特異的な抑制入力の役割の解明
Project/Area Number |
22K06437
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
田中 宏喜 京都産業大学, 情報理工学部, 教授 (40335386)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / 抑制神経回路 / 空間周波数チューニング / チューニングダイナミクス / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光遺伝学的手法を用いて、皮質細胞の視覚特徴チューニング形成における抑制神経回路の役割を細胞種ごとに解明することを目的としている。今年度は、まずマウス電気生理学システムのセットアップを行った。申請時点では、強い視覚応答を得るため覚醒動物を用いることを考えたが、受容野の精密計測を行うには、動物を長時間の拘束することが必要で、動物を麻酔下に置くほうが適していると考え直した。そこで、急性麻酔下の野生型マウスから空間周波数チューニングを計測し、麻酔下でも十分な振幅のあるチューニングカーブが計測できるかを検証した。数匹の動物を用いて実験を行い、はっきりとしたローパス型、バンドパス型の空間周波数チューニングを示す細胞データを取得でき、麻酔下でも本研究の仮説検証が可能であることを確認した。光遺伝学のための光照射システムも購入し、そのセットアップも概ね完了している。 交付された直接経費が申請額の65%程度であり、また輸入品の価格が急激に高騰したため、米国より輸入予定の2種類のマウス(PV-Creマウス,SOM-Creマウス)の購入が困難となった。そこで、PV-Creマウスを用いた研究は計画通り実施するが、SOM-Creは用いず、その代わりとして、国内研究機関から入手できるGAD67-Creマウスを使用するよう計画変更した。後者はGABA作動性抑制細胞全体でCreを発現したもので、このマウスを用いて皮質抑制回路全体を遮断したときと、PV-Creマウスを用いてPV抑制回路のみを遮断したときとで視覚応答を比較し、PV細胞種とそれ以外の抑制回路の役割を比較検討していく。GAD67-Creマウスは現在個体作成中で、まもなく納入予定である。入手した遺伝子改変マウスを系統維持していくためには、遺伝子検査が必要であるが、それを行うための機器やキットの準備を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の予定の変更のため、準備に時間がかかり、最初の計画よりも研究全体の進行はやや遅れている。しかし、遺伝子改変マウスの準備以外のセットアップは概ね完了したので、マウスの準備が出来次第、細胞データ取得実験を開始すれば、令和5年度の計画分は実施できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
GAD67-Creマウスは7月中に搬入する予定である。マウス抑制細胞へのハロロドプシン遺伝子の導入は、申請時点ではウイルスベクターの使用を予定していた。しかし安全面を考慮して、この遺伝子をもつ遺伝子改変マウス(ハロロドプシンマウス)とCreドライバーマウスを交配する方法をとることにする。ハロロドプシンマウスは国内のバイオリソースセンターより5月中に入手する見込みである。 上記のマウスから本実験用のマウスの1つ(Gad67 x ハロロドプシンマウス)を8月中に作成し、その後、細胞データ計測実験を開始していく予定である。光照射用のファイバーと記録電極を刺入して、脳光照射により抑制回路を遮断したときに、細胞のチューニングがどのように変化するのかを調べる、数匹の動物から計測実験を行うとともに、データ解析をおこなって、抑制回路の役割に関する仮説の基本的な検証を令和6年の3月までに行う。これと並行して、PV x ハロロドプシンマウスの作成もおこなっていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、上述のとおり、使用するマウスの変更も含めて研究計画の変更に伴い、実験にやや遅れが生じたためである。マウスの搬入を令和5年の5月、7月に予定しており、繰越額のうち37万円をその際に使用する予定である。 これらのマウスを用いて令和5年8月に本実験用の動物を作製し、これらの動物を用いて、同10月から12月に細胞データ計測実験をおこなう。その際に必要となる消耗品の購入に、繰越額の残額(30万円)を使用する。
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