2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K06438
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
大塚 岳 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 助教 (10390692)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 運動野 / 錐体細胞 / 介在細胞 / 運動学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質は機能的に分化した様々な領野から構成されており、領野間で情報伝達・処理を行うことによって高次機能を発揮する。従って、皮質領野間の結合回路を明らかにし、結合がある領野間でどのように神経活動を制御しているのか機能と関連付けて解明することは重要である。 これまでに、運動野の局所回路構造に関する研究を行い、層内・層間で錐体細胞同士が投射先に依存してサブネットワークを形成していることを明らかにした。また、錐体細胞サブタイプと抑制性介在細胞間の結合回路も明らかにした。さらに、一次運動野(M1)では5層において運動学習時に特定の錐体細胞サブタイプと抑制性介在細胞であるFS(fast-spiking)細胞間の相互結合回路でオシレーションが発生し、学習形成に重要な役割を担っていることを示した。運動野は、M1と高次(二次)運動野(M2)から構成され、相互に軸索投射していることが知られている。M1‐M2領野間の結合では、互いの領野に投射する錐体細胞の皮質内分布や投射する皮質の層が異なり、相互に異なった制御様式をしていることを示した。しかし、M2が運動学習の形成にどのように関与しているのか?また、学習形成を制御するM1のオシレーション活動は、M2からの入力によってどのように制御されているのかは知られていない。そこで本研究では、活動制御の基盤となるM1-M2領野間において細胞レベルのシナプス結合回路を明らかにし、運動学習におけるM1-M2領野間の活動制御機構を解明することを目的とした。本年度はM1‐M2領野間の結合について解析を行い、運動学習におけるM2の錐体細胞サブタイプの関与について解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、M2からM1の投射様式についてラットの脳スライス標本を用いて解析した。子宮内電気穿孔法を異なる胎生期に適用し、AAVのM2への局所注入と組み合わせることで、M2の2/3層や5層の錐体細胞サブタイプに限局してチャネルロドプシン(ChR2)を発現させた。M1の5層細胞から記録を行い、ChR2を発現している神経終末への光刺激によって誘発されるシナプス応答を解析・比較した。その結果、M2からM1の5層錐体細胞への結合特異性は認められなかった。しかし、M1の抑制性介在細胞へのシナプス入力ではM2の錐体細胞サブタイプ間で違いが見られた。主要な介在細胞であるFS細胞とnon-FS細胞間で結合様式が異なっていた。さらに、M2の錐体細胞サブタイプ特異的にアーキロドプシン(eArch)を発現させたラットに回転かごの足場バーのバー間隔のパタン学習を行わせた。学習中にM2錐体細胞サブタイプからM1へのシナプス入力を光操作によって選択的に抑制した結果、特定のM2錐体細胞サブタイプに依存して学習形成が阻害された。これらの結果から、M2の特定の錐体細胞サブタイプからM1の抑制性介在細胞への結合回路が学習形成に重要な役割を担っていることが示唆される。当初の計画に従っておおむね研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、M1-M2領野間結合のスライス実験を用いた解析をさらに進める。また、M1及びM2から慢性細胞外記録を行い、回転カゴを用いたパタン学習における神経活動を解析する。さらに、M2の錐体細胞サブタイプ特異的にeArchを発現させたラットを用いてM1に光照射することでM2からM1へのシナプス入力を抑制する。M1から細胞外記録を行い、運動学習に重要な役割を担うオシレーション活動への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は領野間結合を解析するスライス実験を主に進めた。運動学習における慢性細胞外記録に必要なシリコンプローブ電極を次年度に購入するために繰り越した。
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