2023 Fiscal Year Research-status Report
がんによる糖鎖の異常に着目したがん関連認知機能障害のメカニズム解明
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22K06459
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 純 九州大学, 医学研究院, 講師 (70582708)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CRCI / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗がん剤やがん自体によって抑うつや不安、認知機能の低下が引き起こされることが報告され、がん関連認知機能障害 (Cancer-Related Cognitive Impairment; CRCI) と呼ばれている。CRCIの頻度はがん患者の約75%と高く、患者のQOLを著しく損なうにも関わらず、そのメカニズムは不明な点が多い。本年度は、がんから放出されるサイトカインとそれによる脳機能調節機構に焦点を当て、CRCIの病態の解明を目指した。実験では、C57BL/6Jマウスの皮下組織にメラノーマ細胞 (B16F10) を移植し、がんモデルマウスを作出した。次に、がんモデルマウスの行動解析を行い、遅延見本合わせ課題試験における学習成績の低下や、高架式十字迷路試験における不安関連行動の増加などからCRCIモデルとしての妥当性を確認した。CRCIモデルマウスの血清では、白血球の遊走に関わるケモカインの増加していた。また、CRCIモデルマウスの海馬では、オリゴデンドロサイトの密度の減少していた。さらに、免疫系のシグナル伝達に関わるJanus kinase (JAK) 経路の阻害剤であるバリシチニブを投与し、CRCIモデルマウスにおける認知機能障害の実験的治療を行った。その結果、恐怖条件付け試験において長期記憶が改善する結果を得た。また、バリシチニブの投与によってがんによる不安様行動やうつ様行動が改善する可能性も示唆された。また、バリシチニブの投与は、オリゴデンドロサイト関連遺伝子やミエリン関連遺伝子の発現が増加する可能性が示唆された。本研究の結果は、CRCIにおけるJAK経路の重要性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの結果を踏まえて、免疫シグナルの阻害剤を用いた実験を進めており、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、がんによって引き起こされる糖鎖の異常に着目した研究も展開する計画である。具体的には、細胞外マトリックスとその構成要素に焦点を当て、CRCIモデルマウスにおける糖鎖とPVニューロンの異常を形態学的・分子生物学的に明らかにする。また、糖鎖の改変実験を行い、CRCIの治療の可能性について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
一部試薬の購入が次年度4月以降となったため、繰越金が生じた。
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