2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K06467
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山崎 良彦 山形大学, 医学部, 准教授 (10361247)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 活動電位 / 軸索 / 神経可塑性 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ラット海馬の薄切片(スライス標本)を用い、電気条件刺激によってシナプス可塑性を誘導させたときの軸索伝導可塑性を検討した。海馬CA1ニューロンの細胞体からホールセル記録を行い、興奮性シナプス後電流(excitatory postsynaptic current: EPSC)と逆行性活動電位を記録して電気条件刺激による変化を観察した。可塑的変化を誘導するための電気条件刺激として、1回あるいは3回のテタヌス刺激(100 Hz, 100発から構成,シナプスの長期増強《long-term potentiation: LTP》を誘導する)、1 Hz, 200発から構成される低頻度刺激(シナプスの長期抑圧《long-term depression: LTD》を誘導する)を用いた。EPSC振幅の経時的測定を行い、1回のテタヌス刺激によるシナプスLTPの誘導が確認された細胞において、逆行性活動電位の潜時はテタヌス刺激後より徐々に短縮し、刺激後約15分で有意な変化に達した。有意な変化は、その後約25分間にわたって持続した。この潜時短縮は、LTPの誘導を抑制するカルシウムキレート剤の細胞内投与により阻害された。3回のテタヌス刺激では、1回のテタヌス刺激よりも大きなLTPが誘導されたものの、潜時は刺激直後より逆に延長し、約60分間延長したままだった。低頻度刺激の場合では、LTDの誘導の有無に関わらず、有意な潜時変化は認められなかった。以上のことから、軸索伝導可塑性がシナプス可塑性に関連して生じる可能性が考えられた。また、シナプス可塑性の方向と軸索伝導可塑性の方向が必ずしも一致しないことが示唆され、シナプス可塑性-軸索伝導可塑性連関の新たな側面を見出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間では、シナプス可塑性-軸索伝導可塑性連関について、細胞外記録とホールセル記録を用いて、主に以下の事項を検討していく。1)高頻度刺激(テタヌス刺激)によってLTPが誘導されたときの軸索伝導の変化 2)低頻度によってLTDが誘導されたときの軸索伝導の変化 3)薬物によってシナプス可塑性が誘導されたときの軸索伝導の変化 4)軸索伝導変化の無髄線維と有髄線維の比較。 そして、必要に応じて、カルシウムキレート剤やグルタミン酸受容体阻害薬でシナプス可塑性誘導を阻害したきの軸索伝導可塑性の変化を観察する。さらに、軸索伝導可塑性を阻害するカリウムチャネル阻害薬存在下で実験を行う。本年度では、ホールセル記録によって1)および2)の検討を行うことができ、また、カルシウムキレート剤の効果にまで実験を進めることができた。3)についても準備は整っている。データ取得・解析とも問題なく行えており、研究進捗状況としては、順調に進んでいると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度では、電気条件刺激による検討について引き続き例数を重ね、再現性を確認するとともに、LTPの大きさと軸索伝導可塑性の大きさの相関について検討する。また、本年度の研究でみられたように、テタヌス刺激の回数によって、軸索伝導が促進される場合と抑制される場合とが観察されたので、テタヌス刺激回数をさらに変化させたときの検討も加える。3)については、ATP、Src、代謝型グルタミン酸受容体刺激薬の投与によってシナプス可塑性を誘導させたときの軸索伝導の変化を調べる。さらに、海馬内の他のシナプスでの記録も随時行っていき、上記4)で示した、無髄線維と有髄線維の比較による検討の準備もしていく。
|
Causes of Carryover |
本年度は電気刺激による実験を優先して行ったため、計上していた薬品費の一部は翌年度使用額として計上した。
|