2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K06468
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井ノ口 霞 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特別研究員 (90632349)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ストレス / 社会性行動 / 情動 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
生存に重要である性行動、攻撃行動などの社会性行動は先天的な行動であるが、動物の社会的経験に依存して基盤となる回路が適切に調節されると考えられている。強い恐怖経験などによる心的外傷後ストレス障害(PTSD)では海馬、扁桃体基底外側部に機能異常が生じ、長期的な行動変化を引き起こす。しかし、どのような機能回路変化が先天的行動に影響を与え制御しているのかは明らかにされていない。 本年度は強い恐怖経験によって活動が変化する脳領域を全脳で解析することを試みた。最初期遺伝子下流に蛍光タンパクを発現させたArc-Venusトランスジェニックマウスと光シート顕微鏡、CUBICを用いた透明化手法を組み合わせ、文脈依存的恐怖条件付け課題経験直後にArc プロモーター活性変化が見られる脳領域を検出することを試みた。その結果、海馬や嗅内野など恐怖記憶関連領域での強いシグナル上昇が確認された。一方、本実験条件下では、扁桃体でのVenusシグナルの変化は検出感度以下だったが、その上流領域でArcプロモーター活性上昇が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は恐怖経験により変化する脳領域を複数同定することができ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに恐怖経験や扁桃体の活動抑制で社会性行動が変化することを明らかにした。しかし、恐怖経験直後には扁桃体の最初期遺伝子のシグナル変化は見られず、その上流領域で活動変化が見られた。今後は恐怖経験によって変化する扁桃体の上流回路の入力が社会行動中の扁桃体の活動をどのように制御しているかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
今年度は社会的相互作用の行動実験系を立ち上げる予定であったが、社会性行動を制御する領域が同定できたため、実験計画を変更しその神経回路を明らかにする実験を行ったため未使用額が生じた。このため社会的相互作用の行動実験系は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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