2023 Fiscal Year Research-status Report
適切な行動選択の神経基盤を「意思決定から行動制御まで」つなげて理解する
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22K06469
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
村上 誠祥 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (00831025)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 意思決定 / 行動タイミング / 高次運動皮質 / 歩行誘発野 / 電気生理学 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
適切な意思決定により、よりよい行動を選択・遂行していくことは脳の最も重要な機能の一つである。これまでの研究により、互いに神経連絡を持つ複数の脳領域が行動選択時の意思決定に関与していることが示唆されてきた。しかし、それらの脳領域での意思決定に関わる神経活動が、最終的にどのように行動出力を制御するのか、その神経メカニズムは明らかになっていない。これを明らかにするため、本研究では、電気生理学的手法、光遺伝学的手法、ウィルストレーシング法を組み合わせ、意思決定に関わる脳領域から行動出力領域へと伝達される神経活動を記録し、また活動操作する。 本研究課題では、頭部固定マウスが歩行運動を用いて報酬を取りに行く行動課題を用いる。そのため、まず、脳幹や大脳皮質の様々な領域において、光遺伝学的手法を用いた刺激により歩行を誘発できる領域を探索した。その結果、刺激により歩行・走行運動を誘発できる領域を複数同定した。さらに、これらの歩行誘発領域の入力出力脳領域を明らかにするために、逆行性・順行性ウィルストレーサーを歩行誘発領域に注入する実験を行った。これにより歩行運動に関わる全脳ネットワークが明らかになりつつある。 次に、大脳皮質の歩行誘発領域を光遺伝学的手法を用いて抑制した。オープンフィールド試験においても、頭部固定下で報酬を取りに行くために歩行運動を行わせる行動課題においても、大脳皮質の歩行誘発領域の抑制により、歩行運動が阻害されることが明らかになった。この領域が歩行運動に必須であることが明らかになった。 さらに、歩行により報酬を取りに行く行動課題を遂行中のマウスにおいて、これらの歩行誘発領域から電気生理学的手法を用いた大規模神経活動記録を行い、大脳皮質と中脳からデータを取り終えた。今後詳細な解析により、これらの領域の神経活動と歩行運動の関係を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の歩行誘発領域を同定し、それらの領域の入出力神経連絡を明らかにした。さらに、ここで明らかになったいくつかの歩行誘発領域から、電気生理学的に大規模神経活動記録を行い、歩行関連活動を示す細胞を多数発見した。このことから、プロジェクトはおおむね順調にすすんでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
歩行運動ネットワークの全容を明らかにするとともに、これらの脳領域が「歩行運動を開始するかどうか、また、いつ開始するか」の意思決定にどのように関与するか、すでに取得したデータの解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
シリコンプローブをほとんど破損せずに使用できているため、予備を購入する必要がなくなった。この分の予算は次年度に複数脳領域からの同時記録や自由行動下での神経活動記録を行う際に使用する。
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