2022 Fiscal Year Research-status Report
様々なストレス関連疾患の原因となるストレスホルモンの分泌制御機構解明
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22K06470
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片岡 直也 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (20572423)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ストレスホルモン / 視床下部背内側部 / 視床下部室傍核 / 網羅的神経回路解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスホルモン分泌に関わる視床下部室傍核(PVH)には視床下部や分界上床核、扁桃体中心核などから入力を受けていることから、PVHより上位の神経核がどのような神経ネットワークを形成しているのか、どの神経路がストレスホルモン分泌に強く関与するのか明らかになっていない。そこで、神経細胞群の活動の変化と、血中ストレスホルモン分泌や頻脈、熱産生といったストレス反応の変化との連関を網羅的に捉え、ストレスホルモン分泌に関わる高次中枢神経ネットワーク機構を明らかにすることを目的とする。 本研究計画では、PVHの上位では複数の神経核が協調してCRHニューロンの活動バランスを制御することで、ストレスレベルの違いに応じたストレスホルモン分泌の出力トーンを決定していると仮説をたてた。この仮説を検証するため、光遺伝学を用いたvDMH―PVH経路の機能の証明と、PVH(CRHニューロン)の上位の脳領域からの入力パターン変化が血中ストレスホルモン分泌量や体温、血圧脈拍などのパラメーターに与える効果をマルチファイバフォトメトリなどの2+イメージングと体温、脈拍、血圧を計測するテレメトリーシステム、カテーテル採血法を組み合わせて明らかにする。 2022年度はvDMH―PVHの神経路選択的に抑制を行い血中ストレスホルモン分泌への関与を検討する計画であったが、接触型の採血方法では顎骨近傍の静脈からの採血が難しく手技の習熟に時間を要してしまった。現在はカテーテルを頸静脈に挿入することで対応している。 またvDMH, CeA, BST からCRHニューロンへ伸びる軸索終末の膨大部にどのような伝達物質マーカーが存在するのかを免疫組織化学実験を行う計画であったが、上記の採血方法の検討や次年度のマルチファイバフォトメトリとin vivo 小型顕微鏡観察のための基礎検討に時間を要してしまったため、次年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はvDMH―PVHの神経路選択的に抑制を行い血中ストレスホルモン分泌への関与を検討するため、マウスのPVHへcre を含む逆行感染AAV を注入し、vDMHへcreを発現させた。さらに、vDMHへはcre 依存的に破傷風毒素を発現させるTeTxLC を含む順交感染AAVを導入することで、vDMH―PVH 神経路選択的にTeTxLC を発現させ、vDMHからPVHへ情報伝達物質の放出を人為的に抑制する動物を作製した。この動物の腹腔内へ体温測定用の送信機を留置し、動物が心理ストレスを感じているか確認することとした。 上記の動物へ社会的敗北ストレスを与えた結果、心理ストレスによって体温の上昇が確認され、確実に心理ストレスを感じていることを確認した。血中コルチコステロン濃度を測定するための採血は、アニマルランセットを用いて速やかに顎骨後ろに位置する静脈から行い、血漿サンプルを回収した。心理ストレス前、心理ストレス後30分の2点の採血を行おうとしたが、アニマルランセットでは顎骨近傍の静脈から採血することが難しく、技術の習熟に時間を要してしまったり、出血が酷く止血が困難となった動物が死亡するなど問題点も多いことが明らかとなってきている。現在は実験動物を十分に用意する方法を採用しAAVの注入した動物を増やしている。さらに、採血方法をアニマルランセットを用いた実験者との接触型から、頸静脈や大体静脈へ挿入したカテーテルから採血する方法を検討している。さらに、社会的敗北ストレスだけでなく、拘束ストレスを与えた動物の血中ストレスホルモン濃度測定も同時に行っており、このストレスモデルにおいても採血方法を再検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、vDMH―PVH 神経路選択的にTeTxLC を発現させ、vDMHからPVHへ情報伝達物質の放出を人為的に抑制する動物の作製を行い、採血方法を検討してきたがアニマルランセットは簡便かつ安価に採血が可能な反面、動物への侵襲が大きいことから今後は頸静脈や大体静脈へ挿入したカテーテルから採血する方法を検討する。マウス静脈はラットと比べて細いため2 Fr 程度のカテーテルを用意し(購入済み)、カテーテルの末梢側にはPin-port と呼ばれる間便に採血や薬物投与が行るポートを設置することで、実験動物に触れること無く採血を行う実験系の立ち上げを早急に行う。これまでの検討実験から、マウス頸静脈へのカテーテルの挿入は簡単であるが、カテーテルが詰まることが問題となっていた。そこで、大腿静脈から腎静脈へかけての太い血管から採血をすることを検討している。ラットでは本法を用いる事で劇的に採血する作業が改善したことから、マウスでも同様の結果が十分に期待できる。 2023年度は、PVHの上位に存在するvDMHやCeA, BNST といった脳領域がどのような神経活性化パターンを形成しストレスホルモン分泌を促しているのか明らかにするため、網羅的神経活動解析を可能とするマルチファイバフォトメトリを用いて解析を行う計画である。各脳領域へGCaMP8 や光ファイバーを留置したマウスを社会的敗北ストレスや拘束ストレスなどの様々な心理ストレスモデルへ暴露し、PVHへ入力する各脳領域の出力トーンとストレスホルモン分泌量の相関を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究計画を実施する上での物品費の購入を概ね計画的に行ってきたものの、物価の高騰に伴う試薬や抗体、光ファイバーの相次ぐ値上げから、研究実施当初とは物品の購入計画に変更が生じた。そのため、若干の次年度使用額が生じてしまった。次年度使用額は、2023年度の研究計画内で試薬の購入に充てる計画である。国際情勢が今後も安定しないことを鑑みると今後も試薬や物品の価格高騰が予想されるため、計画的に研究を遂行させる。
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Research Products
(5 results)