2023 Fiscal Year Research-status Report
赤核大細胞・小細胞における上肢運動情報のクロスオーバー
Project/Area Number |
22K06475
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
大野 孝恵 帝京大学, 医学部, 准教授 (60508109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 諭 帝京大学, 医学部, 助教 (50425641)
林 俊宏 帝京大学, 医学部, 教授 (60505890) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 赤核回路網 / 下オリーブ核 / 脊髄 / 視床後核 / ホールセル記録 / 光遺伝学的刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動情報網のハブ的な存在である中脳赤核は、細胞構築、核内分布など解剖学的特徴から大細胞と小細胞と呼ばれる2つの細胞に分けられ、前者は脊髄に投射し赤核脊髄路を形成して四肢の運動に直接関わり、後者は下オリーブ核に投射したのち回帰性ループを形成して小脳からのフィードバックを受けていると考えられてきた。しかしながら、四肢の進化と共に発達を遂げた赤核大細胞と小細胞は、比較解剖学的に発達度合いの種差が極めて大きく、霊長類研究から決定された上記分類法は必ずしも他種には当てはまらず、齧歯類もその例外でない。そこで、申請者らは解剖学的分布ではなく、その機能を重視した投射先による新たな分類を提唱している(脊髄投射細胞(RS 細胞)、下オリーブ核投射細胞(RO細胞)と視床後核投射細胞(RT細胞))。 電気生理学的には、光遺伝学的刺激法によるホールセル記録法にて3種の細胞を比較すると、大脳皮質からのシナプス入力にそれぞれの細胞特性があり、シ ナプス可塑性にも相違が観察された。 解剖学的には、それぞれに小型細胞も大型細胞もあり、吻側にも尾側にも存在していた。トランスミッターについては、RSとROはVGluT2がメインで、RT細胞のみVGATがメインであった。上記結果は2023年度北米神経科学学会にてポスター発表し、多くのご意見 をいただくことができ、それらを踏まえた上で、本年度は3細胞の起始細胞やシナプス特性について確認する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
仔ネズミの発育が悪く、生後1日齢での光遺伝物質(チャネルロドプシン)の脳内インジェ クションが必要な光遺伝学的刺激によるホールセル記録が思うように進まなくなったが、経産マウスを注文し、搬入時期をずらすなどの努力により、概ね計画通り に進められている。 下オリーブ核、視床ならびに脊髄へのインジェクション技術が安定し、各種実験に必要な逆行性アプローチが確実にできるよう になり、複数の免疫染色を組み合わせた免疫組織学的実験に加え、光遺伝学的または化学遺伝学的抑制法を用いた系選択的阻害による行動実験も計画通りスター トしたが、マンパワーの不足に加え、小細胞系への感染にと もなう予想外の副作用により行動実験が足踏み状態となり、研究の順序を変更して、まずは、赤核3細胞の電気生理学的特性と解剖学的特性を中心にまとめる方向で考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
電気生理実験では、昨年度に引き続き、RO細胞、RS細胞およびRT細胞の細胞特性を比べるホールセル記録のデータ数を増やしていくと同時に、発達に伴う変化の有無確認 するため週齢をふっての実験計画をくみ、更に細胞種によるシナプス可塑性(具体的には長期増強(LTP)の有無)を確認する。 また、 3種類の細胞に入力のある、皮質赤核路起始細胞の大脳皮質内分布パターンと小脳赤核路起始細胞の小脳皮質内分布パターンを把握するため、逆行性越シナプス性に感染する狂犬病ウイルスを導入し、CUBICによる透明化脳にて観察する計画である。狂犬病ウイルス使用に必要な、学内での動物実験許可、大臣承認に加え研究支援グループによる支援などの各種手続きは全て完了しており、組織透明化にも成功している。
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Causes of Carryover |
2022年度には、光遺伝学的刺激を用いた電気生理学的アプローチと、行動実験では急性阻害実験に相当する光遺伝学的ならびに化学遺伝学的抑制操作法による手指巧緻運動と歩行運動の解析を行なった。2023年度には、ウイルスベクターによる順行性染色や逆行性染色と抗体染色を組み合わせて赤核細胞を3群にわけ、それぞれの投射パターンやトランスミッターを確認できた。 実験機器は概ね揃っており、研究費は主に実験動物の購入・飼育と各種試薬及びウイルスベクターの購入に使用したが、次年度も引き続き実験動物の購入・飼育と各種試薬及びウイルスベクターの購入は必須である。次年度からは、阻害実験として福島県立医科大学との共同研究となるイムノトキシンを用いた選択的細胞除去法、京都大学との共同研究となる狂犬病ウイルスの導入、山形大学との共同研究となるISH、基生研と東京大学との共同研究となる組織透明化をすべて本格的に開始しまとめに入る計画をしており、使用する実験動物数、試薬数、ウイルスベクター、蛍光色素等、いずれも増えることが予想され、それらに対応する研究費の確保は必須である。 また、データ解析ならびに画像解析に必要なPC関連の出費も予想される。
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Research Products
(3 results)