2022 Fiscal Year Research-status Report
アニオン安定化置換基の隣接位におけるキラルカルバニオンの発生と捕捉
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22K06504
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
佐々木 道子 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30379888)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | キラルカルバニオン / Brook転位 / 相間移動触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アシルシランに対しスルフィネート,ホスファイト,アミドなどのα-アニオン安定化求核剤をエナンチオ選択的に付加させてBrook転位を起こすことにより共役性α-アニオン安定化置換基の隣接位にキラルカルバニオンを発生させ,それを求電子剤で捕捉することによってsp3不斉炭素中心を構築するという方法論の開発を目的としている. これまでに,二相系の溶媒中でキラルな相間移動触媒であるシンコナアルカロイド由来の四級アンモニウム塩存在下アシルシランにシアニドイオンを付加させると,Brook転位後にプロトン化されたシアノヒドリン誘導体が中程度のエナンチオ選択性で得られることを明らかにした.本年度は,水以外の求電子剤の使用の可能性を探るため,分子間反応の検討を行った.すなわち,分子内にアルデヒドや不飽和エステルなどの求電子部位を有する基質を合成し,それらとシアニドイオン,ヒドリドなどの求核剤を反応させて,「アシルシランに対する求核剤の付加/Brook転位/生成するカルバニオンと分子内求電子部位との反応による環化」の連続的過程によりキラルカルバニオンの捕捉を試みるものである. 水が存在する場合,求電子剤として働き生成するカルバニオンをプロトン化しうるため,水の必要性および必要量,溶媒の種類や割合等を詳細に検討している.また,これまでに検討してきたシンコナアルカロイド由来の四級アンモニウム塩以外の種々の構造を有する相間移動触媒の合成にも着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子内に求電子部位(アルデヒド,不飽和エステル)を有するアシルシランと種々の求核剤(シアニドイオン,ヒドリドなど)との反応の条件検討を行った.まだ目的の反応(アシルシランに対する求核剤の付加/Brook転位/分子内求電子部位との反応による環化)が収率良く進行する条件は見いだせていないが,反応条件によって生成物の構成が大きく変化することが明らかになった. また,本年度は新キャンパスにおいて,合成実験が実施可能な研究環境を整える必要があったが,おおむね完了したので,来年度からはより効率的に研究を行うことができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,分子間反応の条件検討および新規相間移動触媒の合成/反応を検討する. また,これまでに,二相系の溶媒中でキラルな相間移動触媒存在下アシルシランにシアニドイオンを付加させると,Brook転位後にプロトン化されたシアノヒドリン誘導体が中程度のエナンチオ選択性で得られることを明らかにしている.この反応の中間体であるキラルなシリルアルコールを別途合成してBrook転位に付し,成績体の絶対構造を比較することで,Brook転位の立体過程を明らかにすることが可能となる.これは,Brook転位の立体過程に関する新規知見となるので,こちらについても進めて行く予定である. また,計算化学を行うことができる環境を整えたので,今後計算による反応機構の解明も並行して行う.
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Causes of Carryover |
分析機器の購入を予定していたが,交付額の問題から別予算で入手することとした.その代わりに計算化学が実施可能な環境を整えたが,差額が発生したため,次年度繰越金が生じた.来年度以降,基質,条件検討のための新規試薬が多く必要となってくる.また,光学活性物質の分析に必要なキラルカラム等の購入も必要となるので,そちらに支弁したい.
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Research Products
(2 results)