2023 Fiscal Year Research-status Report
脱硫黄的ホウ素化を基盤とするペプチド変換反応の開発
Project/Area Number |
22K06518
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
山田 耕平 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (40583232)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脱硫黄的ホウ素化 / 光レドックス反応 / ペプチド変換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
Native Chemical Ligation(NCL)は、C端にチオエステルを有するペプチドとN端にシステインを有するペプチドを、チオエステル交換・分子内S-N転位反応を経て結合する手法であり、天然ペプチドの合成のみならず、現在隆盛のペプチド創薬にも利用されている。しかし、Cysのタンパク質中存在率は1.8%程度と他のアミノ酸と比較して少なく、合成したいペプチドの適切な位置に存在するとは限らない。そのため、Cysをアラニン(Ala)に還元する方法やCysフリーNCL法が開発されているが、任意の天然・非天然アミノ酸残基に変換する手法は報告されていない。一方、含ホウ素ペプチド製剤bortezomibは、プロテアソームの活性中心トレオニン(Thr)水酸基と主鎖カルボン酸と置換したホウ素が、可逆的に共有結合することで活性を発現する。Thrとセリン(Ser)のタンパク質中存在率は計14%程度と比較的多いため、他のペプチド製剤、さらにはタンパク質製剤にもホウ素を導入し、結合部位に存在する水酸基との結合を設計することはリーズナブルである。この文脈において、側鎖にホウ素を含むボロアラニン(BAla)は有用な合成素子となるポテンシャルがあるが、アミノ酸モノマーとしてもペプチドとしても、α位の立体選択性のないラセミ体合成法が数例報告されるのみである。 鈴木宮浦クロスカップリングは含水溶媒中、多様な官能基存在下、ボロノ基を種々の官能基に変換できる優れた反応であるため、BAlaの側鎖を他の置換基に変換可能である。以上の事柄を考え合わせると、Cysのスルファニル基(SH基)をボロノ基に変換できれば、上述の課題が全て一挙に解決できるが、このような反応は未だ報告されていない。筆者は脱硫黄的ホウ素化を実現すべく研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反応条件(光レドックス触媒、溶媒、温度、添加剤、など)を詳細に検討した結果、含水溶媒中で目的物を高収率で得ることができた。副生成物として生じるAla誘導体の生成割合は10%前後まで減少させることができた。また、基質として20種類の天然ペプチドを含むオリゴペプチドを用いても、システイン選択的に反応が進行することが分かった。これは、今後のタンパク質を対象とする反応開発へとつながる成果である。 また、BAlaに対する鈴木宮浦カップリングの検討を行ったところ、目的物が高収率で得られることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
脱硫黄的ホウ素化自体は最適化できたので、その後の鈴木宮浦カップリングを最適化して本手法の有用性を確立していきたい。 反応機構の立証に関しては、おおよその検証は済んでいるので必要なデータを積み上げる予定である。 研究内容をまとめて論文を執筆する。
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