2023 Fiscal Year Research-status Report
実践的化学プローブに資する多成分精密集積とリリース機能を備えたアジドクリック戦略
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22K06523
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
谷本 裕樹 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (00581331)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アジド / ジアゾ / アゾ / スルフィン酸 / クリックケミストリー / 蛍光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、アジドクリック基の位置選択的な別クリック基への変換法の研究を行った。アジド基から、反応性の異なるクリック基で導入法が限定的なジアゾ基への変換を、アジド保護法を活用することによって達成し、各種モノアジド化合物への適用を行った。また、ジアジド分子に対しても適用し、カルボニル隣接アジドの保護が選択的に進行、この間に保護されていない側のアジド基をクリック連結、最後に脱保護変換によってジアゾ基に変換する手法を、ワンポットでの実験操作で完結させることに成功した。本成果により、クリックケミストリーによる分子機能化において汎用されるアジド基だけでなく、有機合成化学を中心に用いられてきたジアゾ基を、多成分集積クリック戦略に積極的に取り入れることが可能となった。 一方、化学プローブ側の開発として進めてきたスルフィン酸捕捉蛍光プローブも併せて取り組んだ。前年度において簡便な結合切断が見出され、リリース機能を持つことを明らかにしたヒドラジド骨格を持つナフタルイミドを酸化しアゾナフタルイミドとしたのち、酸化的翻訳語修飾化合物であるスルフィン酸を作用させたところ、付加成積体の比は1:1と改善の必要があるものの、きわめて強い蛍光発光性を示すスルフィン酸付加体が得られることが明らかとなった。この蛍光発光性はスルフィン酸付加体だけに見られるもので、前駆体基質などでは見られないことから、将来的な蛍光センサー、スルフィン酸化タンパクの蛍光標識への利用が強く期待できる結果が得られた。 以上の結果をまとめ、年度末に2報の論文として報告発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の結果から、多成分集積に資するクリック技術、ならびに標識プローブ技術の基礎検討を完了することができた。標識プローブの分子設計については最終年度も継続して発光効率や蛍光分子の生成比の向上などを検討する必要はあるものの、今後はそれらの統合を含めた検討に移ることができる状況であるため、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
実践への適用に耐えうるよう、スルフィン酸捕捉プローブのさらなる改良研究を継続するとともに、アジドクリックについても一層の自在クリックを目指し、芳香族アジドに対する水素結合の影響を調査する。これら技術の年度内確立と報告を目指し、ケミカルバイオロジーへの実践適用に取り掛かれるよう、共同研究を含めた展開を推し進める。
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Causes of Carryover |
当該年度より対面学会が本格的に再開し、次年度にはさらに国際学会参加のほか各種学会や招待講演企画といった、申請時に想定していなかった一層の渡航費の大幅な支出が、特に予定最終年度での必要となった。加えて、論文のオープンアクセス化費用など、大口の出費が最終年度で必要となり、当該年度を消耗品などを中心にし、次年度での謝金等に充てる必要があったため、次年度使用が必要となった。研究計画自体には現状滞りはなく、予定通り進めていく計画である。
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