2023 Fiscal Year Research-status Report
酸化駆動型連続反応を基盤とした低栄養環境応答型分子の創出
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22K06526
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
君嶋 敦 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任助教(常勤) (20812134)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 天然物合成 / フロー合成 / 脱芳香族化 / 網羅的合成 / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
DC1149Bは低栄養環境選択的なヒト膵臓がん由来株化細胞(PANC-1)に対する増殖阻害活性を有するが、本選択的活性を担う化学構造はいまだに明らかになっていない。今回、その活性発現に必須な化学構造の解明に向け、オキサザデカリン骨格を含有する天然物の合成研究に取り組み、合成した天然物、および合成中間体の活性評価を行った。すなわち、2022年度に確立していたフロー光酸素酸化反応を基盤としたチロシン誘導体の脱芳香族的環化反応により効率的にオキサザデカリンエノンを合成し、アミノクマリンとの縮合を経て共通合成中間体をグラムスケールで調製した。さらに、共通合成中間体から保護基の除去、およびオキサザデカリン部位の酸化修飾等を経て、トリコデルマミドD、E、およびFを安定して供給する合成手法を確立し、トリコデルマミドBおよびCの効率的形式不斉合成も併せて達成することで、本成果をまとめて論文投稿を行なった。また、フロー光酸素酸化反応により得られるオキサザデカリンエノンから、新たに光学活性なトリコデルマミドAを合成することにも成功した。一方、合成した化合物の低栄養環境選択的ながん細胞増殖阻害活性の評価により、トリコデルマミドA、E、およびFは弱いながらも低栄養環境選択的な活性を示したが、トリコデルマミドDでは活性が消失する結果となり、本選択的活性の発現において、オキサザデカリン上のヒドロキシ基の位置および立体化学の関与を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題である低栄養選択的かつ強力ながん細胞増殖阻害活性に必須な化学構造の解明にむけ、チロシン誘導体を基質とした、独自のフロー光酸素酸化を基盤として、光学活性なトリコデルマミド類の統一合成に成功し、合成したトリコデルマミド類およびその合成中間体の活性評価を行うことで、トリコデルマミド類はDC1149Bと比較して選択性および活性が共に低下することを明らかにできた。さらに、トリコデルマミド類における選択的な活性発現にはオキサザデカリン上のヒドロキシ基の位置および立体化学が関与することを示唆する結果を得るに至った。以上より、本選択的活性発現に必須な化学構造の解析が進みつつあることから、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
DC1149Bの合成研究において、トリコデルマミド類の合成に用いた共通合成中間体からの誘導を検討したものの、DC1149Bが有するジケトピペラジン形成には至っていない。そこで、オキサザデカリン骨格構築後のアミド縮合では、アミノクマリンに代えて比較的求電子性の高いエステルを有するアミンとの縮合を経る、ジケトピペラジン形成を検討する。また、選択性および活性の向上を目的として、D-チロシンを出発物質として非天然のトリコデルマミド類を合成し、活性評価を行うことで、より包括的な構造活性相関研究を進める。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた物品の納期が定まらず、結果的に代替品を利用し対応したため、差額分の次年度使用額が生じた。未使用額は課題を誠実に遂行した結果生じたものであり、次年度の交付額と合わせて物品費として利用することで、研究を進展できる。
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Research Products
(7 results)