2022 Fiscal Year Research-status Report
ライブラリー指向型イベルメクチン全合成法の確立と誘導体創製研究
Project/Area Number |
22K06535
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
廣瀬 友靖 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (00370156)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Avermectin / Ivermectin / 誘導体 / 全合成 / ライブラリー構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
Avermectin(AVM)は、当研究所において単離された抗寄生虫・殺虫活性を示すマクロライド系天然物である。これまでにIvermectin (IVM)を含む10種以上のAVM誘導体が開発され、抗感染症薬や抗寄生虫薬、農薬として全世界で利用されている。近年、世界規模の研究と膨大な臨床データから、AVM類がSARS-CoV-2等に対する抗ウイルス活性や、抗寄生虫、抗菌、抗腫瘍活性を示すことが明らかとなった。当研究所ではこれまでに天然物を用いて1000種以上のAVM誘導体の合成を行い、独自の活性評価系を用いた創薬研究を展開してきた。その過程で各新作用の構造活性相関は、既知の抗寄生虫・殺虫活性とは異なることが判明している。一方で、AVM類の構造的複雑さから、既存薬を含めた誘導体はいずれも天然物からの半合成か生産菌の遺伝子操作によってのみ導かれている。本手法は既知の抗寄生虫・殺虫薬の開発には有効だが、母骨格の変換や官能基選択的な変換に限界があるため、新作用の構造活性相関の解明には至っていない。また、既にAVM B1aの全合成例は複数報告されているが、いずれの合成法は多段階を要した直線的な経路であり、総工程数が50工程を超えているためAVM類の全合成を基盤とした誘導化の現実的ではない。 本研究ではメクチン関連化合物のライブラリー構築の基盤が可能となる、IVMの効率的全合成法の確立を検討している。その合成戦略は、IVMを最終段階でグリコシル化と分子内カップリングにより導くものとし、そのコア骨格であるアグリコンを3つのフラグメント(ビニルヨージド1、スルホン2、β-ラクトン3)に分割し、それぞれを拡散的に合成した後、ビスエポキシドを介したカスケード反応により3成分を連結する方法である。本年度はビニルヨージド1、スルホン2の合成とそれらのカップリング法の確立に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はIVMの効率的全合成法の確立を目指しているが、そのコア構造となるアグリコンの合成には3つのフラグメント(ビニルヨージド1、スルホン2、β-ラクトン3)が必要となる。それらをそれぞれを拡散的に合成する必要があり、2022年度では、ビニルヨージド1、スルホン2において必要とする官能基を含んだフラグメントを合成した。それらとビスエポキシドを介したカスケード反応により3成分を連結することを確認できた。本合成経路では3つのフラグメントを用いた収束的経路とカスケード反応の駆使により、短工程での複雑な骨格の構築が可能となる。 実際には各フラグメントの合成における1と2の共通するアンチ配座の立体化学に着目し、市販化合物より調製した共通不斉源からそれぞれに対応するアルデヒドのアンチ選択的付加反応によりビニルヨージド1、スルホン2の前駆体を合成した。そして、得られたビニルヨージド1の前駆体から3工程を経て目的のビニルヨージド1へと導いた。合成した1のエナンチオ過剰率をモッシャー法により確認したところラセミ体であると判明したが、IVMの上部ユニットの骨格形成の検討には有用であると判断している。一方、スルホン2の前駆体からは3工程を経て、光学純度が高く、単一のジアステレオマーとしてスルホン2が得られている。 次に、スルホン2と既知の手法で合成したビスエポキシドとのカップリング反応の検討した結果、ビスエポキシドの存在下でスルホン2のLi化を行うことで基質の分解が抑制でき、目的のカップリング反応が円滑に進行した。これよりピラン環骨格を含むフラグメントの合成に成功した。本反応は1.エポキシドの開環、2.スルホンの脱離、3.生じた水酸基の保護の3工程がカスケード的に進行するものであり、本研究の目的の一つである合成工程数の削減に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までIVMのピラン環部分においてカスケード反応による構築法の確立には成功している。次の鍵工程であるビスエポキシド-スルホン2より得られるスピロアセタール部分とビニルヨージド1のカップリングを用いたスピロアセタール環の構築である。その予備検討としてルイス酸存在下でそのカップリングが進行することを確認しているが、本反応において、後処理での基質分解が確認るという問題がある。その原因として付加反応が進行した後の中間体が不安定であり、クエンチ後の昇温により分解されていると推測した。今後は低温下でのクエンチとスピロアセタール化の促進を目的に添加剤を加えた環形成促進による反応効率の改善を行う。一方、目的のビニルヨージド1は得られているもの、それはラセミ体であり、光学活性な基質の合成が必要である。この点を改善するた光学活性アルデヒドのラセミ化を回避できる低温下でのアンチ選択的付加反応の確立を行う。本検討においては、最適なルイス酸を添加することで、その改善がおこないえる考えている。さらに、IVMの下部ユニットにあたる不安定な多置換テトラヒドロベンゾフラン環の合成を目指し、その不安定な骨格構築を検討する。その逆合成として、Romoらの報告(J. Org. Chem. 2018. 83, 632)を参考に、ケトカルボン酸からAldol-β-ラクトン化によるベンゾフラン環の構築により得られるとし、その前駆体はエノンに対する還元的アルドール縮合で導くことを構想している。そしてエノン骨格は既知化合物であるフラン誘導体から共役アルデヒドへの不斉触媒を用いたアンチ選択的向山アルドール反応で導くことを計画している。 そして下部ユニットの骨格構築法を確立させた後、上部ユニットのカスケード反応の条件最適化及び分子内カップリングとグリコシル化によりIVMの全合成達成を目指す。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Ivermectin represses Wnt/β-catenin signaling by binding to TELO2, a regulator of phosphatidylinositol 3-kinase-related kinases2022
Author(s)
Honami Yonezawa, Akari Ikeda, Ryo Takahashi, Haruka Endo, Yasuyo Sugawara, Mikako Goto, Mirute Kanno, Sousuke Ogawa, Karin Nakamura, Masato Iwatsuki, Tomoyasu Hirose, Toshiaki Sunazuka, Yoshimasa Uehara, Naoyuki Nishiya
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Journal Title
iScience
Volume: 25
Pages: 103912
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Fungal secondary metabolite exophillic acid selectively inhibits the entry of hepatitis B and D viruses2022
Author(s)
Chisa Kobayashi, Yoshihiro Watanabe, Mizuki Oshima, Tomoyasu Hirose, Masako Yamasaki, Masashi Iwamoto, Masato Iwatsuki, Yukihiro Asami, Kouji Kuramochi, Kousho Wakae, Hideki Aizaki, Masamichi Muramatsu, Camille Sureau, Toshiaki Sunazuka and Koichi Watashi
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Journal Title
Viruses
Volume: 14
Pages: 764
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Hakuhybotric acid, a new antifungal polyketide produced by a mycoparasitic fungus Hypomyces pseudocorticiicola FKI-90082022
Author(s)
Yoshihiro Watanabe, Yurika Yoshida, Toshiyuki Tokiwa, Mayuka Higo, Sayaka Ban, Akari Ikeda, Yoshihiko Noguchi, Tomoyasu Hirose, Toshiaki Sunazuka, Kenichi Nonaka, Takashi Yaguchi, Masato Iwatsuki
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Journal Title
J. Gen. Appl. Microbiol.
Volume: 68
Pages: 200-206
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Koshidacins A and B, Antiplasmodial Cyclic Tetrapeptides from the Okinawan Fungus Pochonia boninensis FKR-05642022
Author(s)
Yoshihiro Watanabe, Kodai Hachiya, Akari Ikeda, Kenichi Nonaka, Mayuka Higo, Reiko Muramatsu, Chikako Noguchi, Masako Honsho, Yukihiro Asami, Yuki Inahashi, Tomoyasu Hirose, Hidehito Matsui, Toshiaki Sunazuka, Hideaki Hanaki, Takahiro Ishii, Toshiaki Teruya, Rei Hokari, Aki Ishiyama, Masato Iwatsuki
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Journal Title
J. Nat. Prod.
Volume: 85
Pages: 2641-3649
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ivermectin Inhibits HBV Entry into the Nucleus by Suppressing KPNA22022
Author(s)
Anna Nakanishi, Hiroki Okumura, Tadahiro Hashita, Aya Yamashita, Yuka Nishimura, Chihiro Watanabe, Sakina Kamimura, Sanae Hayashi, Shuko Murakami, Kyoko Ito, Takahiro Iwao, Akari Ikeda, Tomoyasu Hirose, Toshiaki Sunazuka, Yasuhito Tanaka, Tamihide Matsunaga
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Journal Title
Viruses
Volume: 14
Pages: 2468
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A Chemical Degradation-Inspired Total Synthesis of the Antibiotic Macrodiolide, Luminamicin2022
Author(s)
Aoi Kimishima, Hiroyasu Ando, Goh Sennari, Yoshihiko Noguchi, Shogo Sekikawa, Toru Kojima, Motoyoshi Ohara, Yoshihiro Watanabe, Yuki Inahashi, Hirokazu Takada, Akihiro Sugawara, Takanori Matsumaru, Masato Iwatsuki, Tomoyasu Hirose, Toshiaki Sunazuka
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 144
Pages: 23148-23157
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Jietacin derivative, (Z)-2-(8-oxodec-9-yn-1-yl)-1-vinyldiazene 1-oxide, inhibits TNF-α-mediated inflammatory cytokine and chemokine expression via suppression of p65 phosphorylation and importin β1 expression in synovial cell line SW9822022
Author(s)
Kyoko Muneshige, Yuki Inahashi, Makoto Itakura, Masato Iwatsuki, Tomoyasu Hirose, Gen Inoue, Masashi Takaso, Toshiaki Sunazuka, Yoshihisa Ohashi, Etsuro Ohta, Kentaro Uchida
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Journal Title
Pharmaceuticals
Volume: 16
Pages: 5
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Total Syntheses and Chemical Biology Studies of Hymeglusin and Fusarilactone A, Novel Circumventors of β-Lactam Drug Resistance in MRSA2022
Author(s)
Masahiro Kanaida, Aoi Kimishima, Shuhei Eguchi, Masato Iwatsuki, Yoshihiro Watanabe, Masako Hosho, Yoshihiko Noguchi, Kenichi Nonaka, Goh Sennari, Hidehito Matsui, Chikara Kaito, Hideaki Hanaki, Yukihiro Asami, Tomoyasu Hirose, Toshiaki Sunazuka
Organizer
次世代を担う有機化学シンポジウム
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