2023 Fiscal Year Research-status Report
薬物の放出制御を目指したペプチドをリンカーとするCDナノスポンジの開発
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22K06558
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 将史 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (40411904)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シクロデキストリン / ペプチド / リンカー / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロデキストリン(CD)をリンカーで連結させたナノ粒子である“CDナノスポンジ”は、協同効果により高い薬物保持能力を示す。一方で、リンカーを切断することによって包接された薬物の放出が促進されるため、CDナノスポンジの架橋構造の切断に基づく脱組織化という新しいコンセプトの「薬物放出促進技術」の確立を目指している。 昨年度、CDナノスポンジの合成後に適切な溶媒で透析することで、架橋形成したナノ粒子から遊離のCDおよびリンカーを除去することに成功していたが、今後の生産性を考慮すると、現実的ではないと考えた。そこで、より水溶性が高く、それゆえ水での透析が容易なヒドロキシプロピル(HP)化したβ-CDを用いる戦略に変更することとし、HP-β-CDのチオール化を行った。当初、β-CDの場合と同様に、ヨード化あるいはブロム化を介したチオール化を試みたが、いずれも上手くいかなかったため、マイクロ波によるチオール基の導入条件を検討した。 既報通りの条件では、CD分子自体の加水分解物と考えられるm/zを示す化合物のみが質量分析により認められた。マイクロ波の出力(ワット数)、反応温度、反応時間などを検討した結果、CDの分解をある程度抑制しつつ、チオール化しうる条件を見いだした。ただし、合成後に反応物であるチオ尿素をアセトン抽出により除去した試料について、チオール基を検出するエルマン試薬による呈色反応を行ったところ、計算上、CD一分子につき結合したチオール基が1つにも満たないため、最適化条件のさらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
用いるCDの種類を、β-CDからHP-β-CDへと変更し、昨年度までにβ-CDで確立していたチオール化の条件を新たに検討することとなったため、若干の遅れが生じている。ただし、同時に、リンカーとして用いる両端にマレイミド基のついたペプチドの精製も行っており、十分に挽回可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、CDナノスポンジの調製と物性評価、薬物の結合性評価を行う。また、マトリックスメタロプロテアーゼによるペプチドの切断やそれに伴う薬物の放出性評価を実行する。さらに、動物実験などを見据えた生体適合性の評価も行う。
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