2022 Fiscal Year Research-status Report
量子化学計算に基づいたリガンド結合部位の分子相互作用場算出法の開発
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22K06563
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
合田 浩明 昭和大学, 薬学部, 教授 (60276160)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | タンパク質 / リガンド結合部位 / 分子相互作用場 / ハロゲン結合 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はハロゲン結合に着目し、標的タンパク質のリガンド結合部位に対して、ハロゲン結合が形成される領域とその強さをマッピングする方法を考案した。低分子化合物のハロゲン結合形成可能領域を記述する分子相互作用場(Molecular interaction field: MIF)を計算するための量子化学計算を用いた方法は、既に構築済みである。この方法を用いれば、ハロゲン結合が形成される領域とその強さをタンパク質上にマッピングすることも、原理的には可能である。しかし、量子化学計算は計算負荷が高い上に、タンパク質のリガンド結合部位を構成する原子数は多いため、現実的な計算時間でタンパク質に対するMIF計算を実施することはできない。そこで本研究では、以下の3段階でタンパク質のMIF計算を実施するものとした。①タンパク質を構成する原子団を模したモデル分子に対してハロゲン結合に関するMIFを、量子化学計算を用いた方法により算出する。②得られたMIFをガウス関数展開によって近似する。③得られた近似関数を用いて、タンパク質のリガンド結合部位にMIFをマッピングする。本年度の検討では、ホルムアルデヒド分子をタンパク質主鎖のカルボニル基を模したモデル化合物とし、臭素分子をプローブ分子として、ホルムアルデヒド分子周りのハロゲン結合に関するMIFとその近似関数を算出した。タンパク質主鎖を模したモデル分子としてホルムアルデヒド分子を用いたのは、タンパク質―リガンド間で観察されるハロゲン結合の多くにおいて、タンパク質主鎖のカルボニル基が関与しているからである。さらに、この近似関数を用いてタンパク質のリガンド結合部位にハロゲン結合に関するMIFをマッピングする方法とソフトウェアを完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究を進める上で要となる、①MIFをガウス関数展開によって近似するためのコンピュータプログラムと、②近似関数をタンパク質上にマッピングするプログラムを完成させた。次年度以降の研究を進める上で必要な基礎的な方法論が完成したことから、概ね順調に進展していると評した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまでに作成した手法を、ハロゲン結合の形成が確認されているタンパク質―リガンド複合体構造に対して適用し、本手法の妥当性を検証する。検証用の複合体構造は、Protein data bankから選択して用いる予定である。また、これまでの検討においては、コンピュータプログラムの作成を優先したため、より単純な分子構造をもつホルムアルデヒドをモデル分子として用いた。しかし、タンパク質主鎖のモデル分子としてN-メチルアセトアミドを用いる方が、実際のタンパク質主鎖のMIFに近いMIFが得られると期待される。また、医薬品の構造に近い構造を持つブロモベンゼンをプローブ分子として用いる方が望ましい。そこで令和5年度は、分子モデルとしてN-メチルアセトアミドを、プローブ分子としてブロモベンゼンを用い、昨年度同様の検証を行う。
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