2022 Fiscal Year Research-status Report
経皮吸収促進機能を有する油性スマートゲルの創成とワクチンへの応用
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22K06566
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
橋崎 要 日本大学, 薬学部, 准教授 (60318459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 まき子 日本大学, 薬学部, 教授 (50199296)
小菅 康弘 日本大学, 薬学部, 教授 (70383726)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | レシチンオルガノゲル / 抗原 / オボアルブミン |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原/アジュバント複合レシチンオルガノゲル製剤(LO製剤)の調製は、レシチン/極性物質/オイルの3成分系に、モデル抗原としてオボアルブミン(OVA)を加えて調製した。レシチンには大豆由来の高純度ホスファチジルコリン、極性物質には水またはD-リボース、オイルにはミリスチン酸イソプロピルを用いた。 LO製剤の調製は、Freeze Drying法(FD法)および改良FD法(improved FD法、iFD法)により調製した。FD法は、レシチンとOVAからなる凍結乾燥物に、極性物質の水とオイルを添加する方法である。一方、iFD法は、レシチンとD-リボースとOVAからなる凍結乾燥物に、オイルを添加する方法である。得られた製剤について、目視観察、透過率測定、小角X線散乱(SAXS)測定、レオロジー測定を行った。 目視観察の結果より、いずれのLO製剤も、OVA濃度が0.3%までは透明性が高く、OVA濃度が0.6%以上になると濁りを生じることがわかった。 透過率測定の結果より、いずれの方法で調製したLO製剤も、OVAが製剤中に可溶化され、可溶化限界量を超えても製剤中で安定に分散することがわかった。 SAXS測定の結果より、いずれの方法で調製した場合も、LO製剤中に逆紐状ミセルの存在が確認された。また、SAXSプロファイルの低q領域における傾きは、OVAの濃度が0.3%まではほとんど変化しなかった。これは、OVAがLO製剤中に可溶化されている状態では、LO製剤中の逆紐状ミセル構造は変化しないことを意味している。一方、OVAの濃度が0.6%以上になると、低q領域の傾きが増加した。このことから、可溶化限界量を超えたOVAがサブミクロンサイズのコロイド粒子となって製剤中に分散していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究室ではこれまでに、水溶性高分子をレシチンオルガノゲル中に可溶化する技術(FD法)の開発に成功している。しかしながら、FD法は作業工程の問題で液体の極性物質(水など)しか用いることができなかった。本年度は、固体の極性物質を使用するための改良FD法の開発に成功した。 さらに、FD法およびiFD法で調製したLO製剤を用いて、OVAの放出性ならびに皮膚移行性についても検討を始めている。 また、一部のLO製剤では感作実験の予備検討も始まっており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の結果を踏まえ、OVAの皮膚移行性評価および感作性評価を本格的に進める予定でいる。 OVAの皮膚移行性は、ヒト皮膚に近いユカタンミニブタ摘出皮膚を用いて検討を行う。この結果を踏まえ、製剤の最適化を行う。 感作性評価は、各種LO製剤をマウスに皮下注射および皮膚適用し、血清中IgGおよびIgE濃度の測定から皮膚適用時の有用性を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度から実施する予定の感作性実験を前倒しして開始したため、消耗品(マウス、ELISAキット)の購入スケジュールに変更が生じ、未使用額が発生した。このため、未使用額は来年度の消耗品の購入経費に充てることとしたい。
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