2023 Fiscal Year Research-status Report
皮膚の脂質多様性とその代謝制御による皮膚恒常性維持機構の解明
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22K06583
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
永沼 達郎 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (60779619)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 皮膚炎 / セラミド / リピドミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚に存在する多様な脂質分子は,それらの組成や代謝バランスが適切に制御されることで皮膚の機能を巧みに制御している。本研究では,皮膚炎の病態依存的にどのような脂質組成の異常が,どのようなメカニズムで生じ,どのような表現型に寄与するのかを解明することを目的としている。 本年度は,アトピー性皮膚炎モデルマウスSpadeにおいて,セラミドNSがセラミドNDSと同様に皮膚炎抑制効果を示すか検証を進めることで,皮膚炎抑制効果の構造活性相関を調べた。その結果,セラミドNSはSpadeの皮膚炎発症を遅延させ,炎症性サイトカインの発現を抑制した。また,ケラチノサイトの分化マーカーの異常を是正した。以上より,Spadeにおける皮膚炎抑制効果にセラミドの構造特異性は認められなかった。 また,他の皮膚炎モデルとして,TLR7アゴニストであるイミキモドを連続塗布することで乾癬様皮膚炎を誘導するモデルマウスを用いて,Spadeと同様に表現型解析と脂質組成解析を行った。その結果,乾癬モデルでは,皮膚バリア機能に特に重要なセラミドクラスであるアシルセラミドEOSが病態初期から低下することが明らかとなった。培養不死化ケラチノサイトに対するTLR7アゴニスト処理によっても,in vivoと同様にアシルセラミドEOSレベルが低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アトピー性皮膚炎モデルSpadeにおいて,皮膚炎抑制効果に対するセラミドの構造依存性を評価することができた。 また,他の皮膚炎モデルの表現型と脂質組成の継時変化を明らかにし,アシルセラミドEOSが特徴的に減少することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
乾癬モデルにおいてアシルセラミドEOSのレベルが低下する分子メカニズムを明らかにするため,in vivoおよびin vitroにおける各種脂質代謝酵素の発現量をRT-PCRにより解析する。同時に,アシルセラミドEOSの合成に関わる酵素の酵素活性を評価するために,重水素標識された脂質標準品を用いたラベルトレーサー実験を行う。 また,さらに新たな皮膚炎モデルとして,MC903を連続塗布することでアトピー様皮膚炎を誘導することができるモデルマウスを用いて同様の解析を行い,各種皮膚炎モデルに特徴的あるいは共通するセラミド代謝異常や,それを引き起こす分子メカニズムの究明を進める。
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