2022 Fiscal Year Research-status Report
The roles and novel synthetic routes of endocannabinoid, lysophosphatidylinositol, in the inflammatory and immunological actions.
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22K06584
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山下 純 帝京大学, 薬学部, 教授 (80230415)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | GPR55 / リゾホスファチジルイノシトール / リゾリン脂質 / GPCR / 生理活性脂質 / 免疫・炎症反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはカンナビノイド受容体CB1とCB2の内在性アゴニストの探索を行い、アラキドン酸含有グリセロールである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)を同定した。その後、CB1とCB2以外のカンナビノイド受容体の存在が報告され、Gタンパク質共役型受容体GPR55が同定された。私たちはGPR55の内在性アゴニストの探索も行い、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、特に活性の高いアゴニストとして2-アラキドノイルLPIを同定した。GPR55は脳に多く存在するオーファン受容体として同定され、ついで新規カンナビノイド受容体として報告された経緯から、GPR55が脳で働くことが想定されていた。本研究ではGPR55の真の機能を探るため、マウス臓器・細胞での発現を検討した。GPR55は、脳にも発現はしていたが、その発現量は低いもので、精巣、消化管(小腸、大腸)、リンパ節、脾臓などに高発現していた。また、脾臓と小腸の細胞をさらに分画すると、GPR55は脾臓の場合はB細胞やT細胞などのリンパ球や樹状細胞に、小腸の場合は上皮内リンパ球に多く発現し、炎症・免疫に関与する細胞に高発現することが分かった。GPR55は精巣に非常に高発現していたが、精巣の細胞を分画すると、精子形成細胞の精製に従ってGPR55の発現量が低下し、セルトリ細胞など体細胞に高発現していることを示す。セルトリ細胞はアポトーシスを起こした精子などを貪食し炎症・免疫に関与する。これらの知見は「GPR55は炎症・免疫に関与する」ことを示すと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)マウス臓器のGpr55の発現解析 マウス臓器から総RNAを抽出してcDNAを調製した。RT-PCRによりGpr55の発現を解析すると、Gpr55は脳にも発現はしていたが、その発現量は低いものだった。精巣、消化管(小腸、大腸)、リンパ節、脾臓などに高発現していた。2)精巣のGpr55の発現分布 マウス臓器の中で精巣がいちばんGpr55を高発現していた。精細管をコラゲナーゼとヒアルロニダーゼで処理して、培地中でシャーレで培養した。シャーレに結合した体細胞(セルトリ細胞など)と結合しなかった精子形成細胞(生殖細胞)を分離した。Gpr55は体細胞と生殖細胞の両方に存在し、特に体細胞に高発現していた。3)脾臓の分画とGpr55の発現解析 脾臓の細胞をばらばらにした後、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、樹状細胞フローサイトメーターで分画した。Gpr55はTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞に発現したが、マクロファージには発現しなかった。4)Gpr55の消化管での分布 腸管を大腸、小腸、十二指腸、空腸、回腸に分画した。腸管の各部位にGpr55は広く分布していた。小腸をPercollを用いて分画するとGpr55は上皮内リンパ球に多く発現した。これらの知見は「Gpr55は炎症・免疫細胞に発現し、炎症・免疫に関与する」ことを示すと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)免疫細胞のどの細胞にGPR55が発現しているか?免疫細胞のどの機能にLPI-GPR55が関与しているか? 脾臓の細胞を分画し、GPR55がリンパ球や樹状細胞に発現していることを確認している。免疫細胞の様々な免疫プロセスのどのステップにLPI-GPR55が関与しているかを検証する。白血球の分化、増殖、細胞接着、走化性、浸潤、貪食、サイトカイン産生、分泌、脱顆粒、イムノグロブリンの産生などに対するLPIの効果やアンタゴニストの作用を調べる。 2)LPI-GPR55のコンカナバリンA(ConA)誘発性肝炎への影響 急性肝障害の実験動物モデルとして、ConA 誘導性肝炎 に対する影響を調べる。ConAをマウスに投与すると、ConA は類洞内皮細胞やクッパー細胞表面の糖タンパク質とT細胞の表面のT細胞受容体を架橋し、T細胞を活性化する。活性化T 細胞はインターフェロンγや腫瘍壊死因子αなどのサイトカインを放出し肝炎を誘導する。GPR55のKOマウスで同様の実験を行い、野生型マウスに比べて障害の程度が比べて、GPR55の関与を検証する。ConA投与後の肝臓 のT細胞の活性化状態を、CD69 及び CD25抗体を用いたフローサイトメーターで解析する。 3)ConA誘発性肝炎における新規LPIの産生機構について 私たちは細胞内でLPIを産生する酵素として、ホスホリパーゼA1(DDHD1)を同定している。肝炎に関与するLPI産生酵素は細胞外に存在する可能性を考察した。マウスにヘパリンを投与すると血中にLPIが大量に生成することを確認している。また、ヘパリンを投与しておくとConAによる肝炎が起こらないことが知られている。これらの結果は、類洞の血管壁のへパラン硫酸に結合している肝性リパーゼがLPI産生を担う可能性を示している。
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Causes of Carryover |
本年度は大学から支給される研究費を用いて研究を行った。次年度(2023年度)に使用し、研究成果を得る。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Expression and distribution of GPR55, a receptor for lysophosphatidylinositol, in mouse tissues and cells.2022
Author(s)
Takashi Tanikawa, Saori Oka, Keisuke Nakajima, Yasuhiro Hayashi, Yoko Nemoto-Sasaki, Yoichiro Arata, Takayuki Sugiura, Atsushi Yamashita,
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Journal Title
BPB Reports
Volume: 5
Pages: 16-20
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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