2023 Fiscal Year Research-status Report
Neural circuits and longevity mechanisms regulate hibernation-like diapause in Caenorhabditis elegans.
Project/Area Number |
22K06596
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
堀川 誠 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 研究員 (50775997)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 冬眠 / 寿命 / 老化 / 休眠 / 温度 / 線虫 / 神経制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では線虫の冬眠様現象である低温誘導性休眠(以下、低温休眠)の制御機構を明らかにするとともに、低温休眠を制御する神経機構の解明と低温休眠現象の抗老化研究への応用を目的とする。先行研究より熱ショック因子 (hsf-1)機能欠損株は9℃において孵化直後に発生を停止し、通常の飼育温度 (20℃)に戻す事で成長を再開する可逆的な低温誘導性の休眠表現型を示す事を発見し、線虫の低温休眠と定義・命名した。低温休眠は様々な抗老化・抗ストレス遺伝子の導入により抑制される事から低温休眠と寿命制御・ストレス応答には共通の制御メカニズムが存在すると仮説を立て、低温休眠を指標とした長寿変異株スクリーニングシステムを開発し、この新規スクリーニングシステムにより長寿変異株の獲得に成功した。さらに、全ゲノム解析 (WGS)と量的形質遺伝子座 (QTL)解析を組み合わせたMutMap 法により低温休眠と寿命の共通制御遺伝子の同定に成功した。新規に同定された休眠制御遺伝子はNMD (nonsense mediated mRNA decay)を制御するキナーゼsmg-1およびsmg-2、MAPK経路の制御因子nsy-1/MAPKKK, mtk-1/MAPKKKおよびMAPK経路下流の転写制御因子sur-2/MED23など寿命制御にも関与する事が知られている遺伝子であった。そして、これまで寿命制御に関して報告の無かったsur-2/MED23遺伝子の機能欠損が寿命を延長する事を明らかにした。低温休眠を制御する神経経路の解析では、低温休眠制御に線虫のneuromedin U様神経ペプチドcapa-1およびneuromedin U受容体ホモログnmur-1、およびモノアミン神経伝達物質チラミンの合成遺伝子tdc-1が関与している事を明らかにした。これらの成果をまとめた論文を投稿し、現在審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線虫の冬眠様現象である低温休眠を指標とした長寿変異株のスクリーニングシステムを樹立し、複数の長寿変異株を取得する事に成功した。得られた長寿変異株の全ゲノム解析より低温休眠と寿命を制御する遺伝子を複数同定し、それらはNMD (nonsense mediated mRNA decay)を制御するキナーゼsmg-1およびsmg-2、MAPK経路の制御因子nsy-1/MAPKKK, mtk-1/MAPKKKおよびMAPK経路下流の転写制御因子sur-2/MED23など寿命制御にも関与する事が知られている遺伝子であった。さらに、MAPK経路下流の転写制御因子sur-2/MED23が新規の寿命制御遺伝子である事も明らかにした。また、線虫の低温休眠の制御に関わる神経伝達物質・神経ペプチドの同定にも成功し、線虫のneuromedin U様神経ペプチドcapa-1およびneuromedin U受容体ホモログnmur-1、モノアミン神経伝達物質チラミンの合成遺伝子tdc-1が低温休眠の神経制御に関与している事を明らかにした。これらの成果をまとめた論文を投稿し、現在審査中である。 さらに低温休眠表現型を示す新規変異株を複数、単離する事にも成功しており、これら新規の低温休眠変異株はhsf-1機能欠損によらない異なるメカニズムにより低温休眠を誘導しているが、一方でhsf-1変異株の低温休眠を制御するMAPK経路の機能欠損により休眠が抑制されるなど、低温休眠の誘導には複数の異なる上流経路と共通する下流の制御メカニズムが存在することをあきらかにしている。現在、これら新規の低温休眠変異株の休眠制御メカニズムに関する論文を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在審査中の論文の受理を目指すとともに、先行論文に続く2番目の論文の投稿準備を進める。 また複数の低温休眠変異株の遺伝学的解析により低温休眠にはMAPK経路など共通の制御メカニズムが存在する事を明らかにしており、これら上流の制御メカニズムが異なる複数の低温休眠変異株の比較解析により低温休眠制御に共通する中心的なシステムの発見を目指す。具体的な手法としてRNA-seqなどオミクス解析により低温休眠制御の中枢遺伝子候補を絞り込み、変異株やRNAi法を用いた遺伝学的解析により低温休眠のマスターレギュレーターの同定を目指す。
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