2023 Fiscal Year Research-status Report
糸状菌の細胞表層動態を可視化する~新しい薬剤標的スクリーニング系の開発に向けて~
Project/Area Number |
22K06600
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 大 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (00613449)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プロテインノックダウン / Aspergillus fumigatus / ガラクトフラノース / オーキシンデグロン / アスペルギルス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、これまでに用意してきたオーキシンデグロン・プロテインノックダウンのコンポーネントをさらに改良し、Aspergillus fumigatus生体内で効率的なプロテインノックダウンを誘導できる技術を整備するとともに、細胞壁構造構築関連遺伝子のプロテインノックダウンが可能な菌株ラインナップをさらに拡充した。UDP-グルコース:ガラクトースエピメラーゼをコードするuge5のゲノム領域にコドン最適化したmini-AID配列を挿入した株(uge5-AID株)を用いて種々の基礎的検討(オーキシンアナログ濃度、暴露時間、継続時間など)を実施し、低濃度かつ高効率に、速やかなプロテインノックダウンを誘導できることを確かめた。またuge5-AID株を用いて細胞壁構造の量的・質的変化解析の予備検討を行っており、実施予定であった実験(NMR、GC-MS、蛍光顕微鏡、ハイコンテントアナライザなど)が概ね適用可能であることを確かめた。その過程で、uge5-AID株のプロテインノックダウンによっても細胞壁ガラクトフラノース多糖の量的変化、質的変化が72時間程度までほとんど見られないことを突き止めた。これは、Aspergillus fumigatusのガラクトフラノース糖鎖が細胞内からの供給が止まった後でも比較的安定に存在し続けることを示しており、ガラクトフラノシダーゼなど糖質加水分解酵素との相互作用を考えるうえで重要な示唆になると思われる。uge5-AID株で得られた成果は、令和6年度中に論文や学会にて発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、Aspergillus fumigatus向けにプロモーター改変ならびにコドン最適化したTIR1変異体発現ベクターを作製し、十分なタンパク質発現と高効率なオーキシンデグロン-プロテインノックダウンをAspergillus fumigatus生体内で誘導できる実験系を確立した。UDP-ガラクトースムターゼ遺伝子glfAのゲノム下流にmini-AID配列を挿入した株は前年度までに既に得られていたが、今年度はさらにUDP-グルコース:ガラクトースエピメラーゼ遺伝子uge5、βグルカン合成酵素遺伝子fks1、コアマンナン合成酵素遺伝子cmsAなどにAID配列を挿入した株を作製し、十分なプロテインノックダウンを誘導できることを確かめた。令和5年度終了時点ではuge5プロテインノックダウン株の解析が最も進んでおり、プロテインノックダウン誘導に必要なオーキシンアナログ濃度、時間、シクロヘキシミドチェイスとの比較などの基礎的な検討のほか、細胞壁ガラクトフラノース糖鎖の経時的量的変化の追跡や菌糸生育、胞子形成などフェノタイプ解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、これまでに得られたオーキシンデグロン誘導株、特にglfA、uge5株を用いて、ターゲットタンパク質の速やかなプロテインノックダウンが細胞壁構造構築に与える影響を解析する。オーキシンアナログ濃度依存性、時間依存性に変化する細胞壁ガラクトマンナンや細胞壁グルカンの量的な変化をウエスタンブロット解析や生化学的解析にて、また質的な変化をGC-MSやNMRにて捉える。この後オーキシンアナログを含む培地から含まない培地へと交換する実験も計画しており、ターゲットタンパク質がノックダウンから回復する時間、ならびに細胞壁多糖の回復に要する時間とのズレを測定する。これにより、細胞壁構造構築に関わる酵素それぞれの活性を生細胞中で捉えることができるのではないかと考えている。
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