2022 Fiscal Year Research-status Report
脳に常在する境界性マクロファージの役割解明とALS治療を目指した実験的介入研究
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22K06634
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三澤 日出巳 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (80219617)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / マクロファージ / 血液脳関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
ALS病態進行に伴う脳血管周囲マクロファージ (PVM) の量的変化を評価するため、各病期のALSモデルマウス (SOD1G93Aマウス) の脊髄切片においてマクロファージマーカーCD206及び血管マーカーCD31での蛍光二重免疫染色を行い細胞数を定量した。その結果、病態進行に伴うPVMの有意な増加が認められた。次に、PVMの質的変化を評価するため、しばしばマクロファージの活性化マーカーとして用いられるMHC class Ⅱ(MHC Ⅱ)分子に着目し、マクロファージマーカーCD163と血管マーカーCD31との蛍光三重染色を行った。その結果、ALS病態後期においてPVMのうちMHC Ⅱ (+) の割合が増加する傾向が見られた。 SOD1G93AマウスにおいてPVMの量的・質的変化が見られたことから、次にPVMへの実験的介入による病態進行への影響を評価した。ALS発症前のSOD1G93Aマウスに、PVMを選択的に枯渇できる薬剤として知られているクロドロン酸リポソームを投与し、PVMが枯渇した際のALS病態を解析した。まず、クロドロン酸リポソームを大槽(脳脊髄液)内に投与し、ミクログリアには影響を及ぼさずPVMを選択的に枯渇できることを確認した。次にSOD1G93Aマウスへの投与を検討したが、PVMは枯渇後1週間程度で再びリカバー・定着することが知られていたため、複数回投与によりPVMを持続的に枯渇する系を新たに確立した。発症前(80日齢)のSOD1G93Aマウスにクロドロン酸リポソームまたはコントロールリポソームを週に1度、トータル6回大槽内投与し、神経学的スコアと生存期間を指標にALS病態を比較した。その結果、クロドロン酸群のスコア2(中程度の症状)に達するまでの期間及び生存期間はコントロール群より約1週間延長し、PVMの枯渇により病態が改善する傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の当初仮説では、SOD1G93AマウスにおいてPVMが毒性タンパク質を除去することでALS病態改善に結びつくと予想した。しかし、病態進行に伴い活性化したPVMが増加することや、PVM枯渇時に病態改善の傾向が見られたことを考慮すると、PVMはむしろ炎症を誘発しALS病態を進行させる悪化因子である新たな可能性が浮かびあがってきた。今後、この可能性について追求する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ALSモデルマウスでは、病態進行に伴い、血液脳関門(BBB)の構成因子である細胞外マトリックスの減少が報告されている。また、BBB破綻に伴う脳・脊髄への有害因子の流入が病態進行に関与することが示唆されている。一方で、野生型マウスにおいて、PVMの実験的枯渇による細胞外マトリックスの発現増加が示唆されており、我々の実験で示されたPVM枯渇時のALS病態改善の機序については、減少した細胞外マトリックスの回復に伴うBBB破綻の抑制である可能性が考えられる。そこで、マウスへの薬剤投与によりPVMを枯渇し、細胞外マトリックス量及び有害因子の流入量を免疫組織染色により定量することで、PVM枯渇によるALS病態改善機序の解明を目指す。
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Research Products
(1 results)