2023 Fiscal Year Research-status Report
G12ファミリーのGタンパク質を介したシグナルの解析
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22K06646
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
黒瀬 等 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 徳島大学専門研究員 (10183039)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 受容体 / Gタンパク質 / シグナリング / G12ファミリー / がん化 |
Outline of Annual Research Achievements |
受容体-Gタンパク質シグナルは細胞膜シグナルの主要な経路である。100を超える受容体に対してGタンパク質は16種しか存在せず、Gs、Gi、GqおよびG12から成る4種のファミリーに分けられる。Gsはアデニル酸シクラーゼの活性化、Giはアデニル酸シクラーゼの抑制、GqはホスホリパーゼCの活性化、G12はRhoAの活性化をそれぞれ引き起こすと考えられている。G12にはG12とG13が含まれ、いずれも低分子量Gタンパク質(RhoA)を活性化する。しかし、in vivoではお互いの機能を相補しないため、RhoA以外のシグナルも活性化していると考えられている。すなわちG12とG13はRhoA以外の独自のシグナルを活性化していると想定されている。本研究では、G12とG13独自のシグナルを、リン酸化プロテオミクスなどの手法を用いて明らかにすることを目的としている。受容体はin vivoでの役割解析を踏まえて、G12あるいはG13を選択的に活性化するデザイナー受容体を用いる。デザイナー受容体はクロザピン-N-オキシド(CNO)のみをアゴニストとする。すでに、G12選択的デザイナー受容体は作製していることから、G12選択的シグナルの解析を開始した。G12選択的デザイナー受容体をHEK293A細胞に発現させCNOで刺激した細胞をリン酸化プロテオミクスの手法で解析したところ、cAMP依存性タンパク質リン酸化酵素(PKA)が活性化されていることを見出した。リン酸化プロテオミクスでは基質ペプチドの解析を行っているのみで、実際にPKAが活性化されていると示すことができないため、PKAの活性化を測定した。今後は、GqおよびGsの関与を除く実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに、G12選択的デザイナー受容体を刺激すると、リン酸化ペプチドを解析したリン酸化プロテオミクスの手法によりPKAあるいはPKAに近い基質特異性を持つキナーゼが活性化されることを見出している。実際にPKAが活性化されていることは、PKAの活性化を測定するキットを用いて確認している。PKAの活性化は、用量と時間依存性を示したことから、薬理学的にもPKAの活性化は意味のある応答だと結論できる。今後、G12よりPKA活性化までのシグナルを解析することで、新たなシグナルを提唱できると期待している。また、G12ファミリーは細胞増殖(がん化を含む)にも関わっていると報告されていることから、新たなシグナルの解明はがん化のメカニズム解明に貢献できると考えている。これらの観点からおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験を次のように計画している。今回リン酸化酵素としてPKAを同定した。そこで、Gsの関与を否定するために、初めに刺激によってcAMP量が上昇するか検討する。cAMP量の変化が検出限度以下である可能性も考慮する。次に、Gsとのカップリンが弱い場合、Gsαをノックダウンさせた効果も検討する。さらに、選択的受容体といえども受容体のGタンパク質選択性は厳密なものではなく、G12以外にもGqとカップルしている可能性がある。そこで、Gqαの阻害剤YM-254890の添加時のPKAの活性化を測定し、Gqの関与がないことを確認する。通常、PKAは触媒サブユニットと制御サブユニットが結合しており、cAMPが制御サブユニットに結合することで、2者は解離する。PKA触媒サブユニットが相互作用する分子をデータベースより検索し、制御サブユニット以外の分子(候補分子と呼ぶ)を見出す。G12刺激によりPKA触媒サブユニットが候補分子から解離するメカニズムを検討する。この時、候補分子とPKAの解離はPKAサブユニットと候補分子に異なるプローブを付加させたFRETやBRETを用いて解析する。受容体からPKAサブユニットまでのシグナリングを明らかにする実験系を組み立てる。今回同定したG12選択的シグナリングがin vivoでも活性化されていることを示すため、ゼブラフィッシュに発現させ、RNAiを用いたノックダウンやPKA阻害剤を用いた実験を行うことも計画している。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していた阻害剤を用いたPKA活性の測定が、処理するサンプル数が多くなったため次年度に実施することになり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)阻害剤を用いたPKA活性の測定に要する費用を物品費と合わせて使用する予定である。
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