2023 Fiscal Year Research-status Report
骨髄腫の薬剤耐性におけるオートファジーネットワークの解明と、阻害による耐性化克服
Project/Area Number |
22K06653
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
森谷 昇太 東京医科大学, 医学部, 助教 (30634935)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨髄腫 / 微小環境 / 間質細胞 / オートファジー / ボルテゾミブ / クラリスロマイシン / NOXA |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄腫難治性の原因の一つに、間質細胞と骨髄腫細胞の接着によって誘導される間質細胞誘導性薬剤抵抗がある。研究代表者は間質細胞株と骨髄腫細胞株を共培養すると、共培養下ではプロテアソーム阻害剤による骨髄腫細胞株への殺細胞効果が減弱することを見出し、この原因として骨髄腫細胞株に細胞死促進タンパク質NOXAの誘導減弱が起きることを明らかにしてきた。2023年度はこれまでの研究成果をPLOS ONE誌に報告した(PMID: 38039297)。
これまでの研究においてBortezomib(BZ)などのプロテアソーム阻害剤とオートファジー阻害作用を持つマクロライド抗生剤の併用が骨髄腫細胞株にNOXAの持続発現をもたらし、間質細胞株の存在下でも強力に骨髄腫細胞株に殺細胞作用を誘導するとの成果を得ている。そこで本年度は骨髄腫の新規治療戦略の確立を目指し、NOXAおよびNOXAに関連する分子を標的とした研究を行った。ミトコンドリア膜上ではMCL-1やBCL-2といったタンパク質が細胞死促進的に働くBAKやBAXの活性を負に抑制している。NOXAはMCL-1を阻害することでミトコンドリアを介したアポトーシスを誘導するが、BZとBCL-2阻害薬であるvenetoclax(VEN)を併用したところ、骨髄腫細胞株に相乗的な殺細胞作用の増強が見られた。この殺細胞作用はNOXAを欠損した骨髄腫細胞株では大きく抑制された。この結果からNOXAとBCL-2といった二つの因子を標的とすることが骨髄腫の治療成績の改善につながる可能性が示唆された。さらに抗腫瘍効果を高めるためにオートファジー阻害作用を持つマクロライド抗生剤との併用実験を検討している。また間質細胞株の存在下でも本併用療法が有効であるか検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、間質細胞株と骨髄腫細胞株を共培養したときに生じる間質細胞側のオートファジーに着目した研究を計画していたが両細胞を区分するために必要なフローサイトメーターに修理不能な不具合が生じた。また、遺伝子欠損間質細胞株のクローン間の実験間誤差が大きく、現状、間質細胞側に起きる現象については明確な実験結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標であった間質細胞側に生じる現象の解明については間質細胞株の種類を増やして研究を進める。機器の不具合などもあり、現時点では細胞死促進タンパク質NOXAの人為的制御に着目した研究を進めている。当初の研究計画については、セルカルチャーインサートを隔てた共培養実験を中心に行い、両細胞で生じるオートファジーの分子病態学的な意義の解明を進める予定である。
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Causes of Carryover |
端数分および網羅的遺伝子探索を次年度以降に見送ったため。残金は次年度の試薬消耗費として適切に使用する。
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