2022 Fiscal Year Research-status Report
新たに発見したフラバノン誘導体によるガン特異的な細胞老化誘導機構の解明
Project/Area Number |
22K06661
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河本 正次 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 教授 (90294537)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フラボノイド / 細胞老化 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
ガンの克服は人類共有の願いであるが、現行の抗ガン剤や分子標的薬剤には依然として副作用と治療抵抗性の問題があるほか、昨今話題の免疫療法もまだまだ黎明期にあり普及には時間を要する。このような中、早期のガン細胞だけを消去できる次世代型抗ガン剤の登場も求められている。研究代表者はこれまでに漢方由来の新規フラバノン誘導体がガン特異的に細胞老化を誘導しうることを見出した。本研究では、このフラバノン誘導体によるガン特異的な細胞老化誘導現象の分子機構を解明するとともに、当該知見をガンの選択的除去剤の創製へと応用展開することを目的としている。
2022年度では本フラバノン誘導体がp53ガン抑制遺伝子を介してガン細胞の細胞老化を誘導する一方、正常細胞に対して本分子は当該p53の活性化を全く誘導しないことを見出した。また同フラバノンの刺激に伴い発現変動する分子群のトランスクリプトーム解析を実施したところ、本分子により活性化される主要な標的転写因子がp53であることが裏付けられた。更にPhos-tagイムノブロット解析を基調としたフラバノン刺激に伴うp53のリン酸化ステータスを追跡評価する実験系、ならびにガン細胞のsenolysisをin vitroで評価する独自の機能検定系についても構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では新規フラバノン誘導体がp53がん抑制遺伝子を介してガン特異的な細胞老化を誘導することが立証されたばかりでなく、本分子がp53を主要標的としてガン特異的細胞老化を規定する転写ネットワークを実際に駆動させうることも明らかとなった。更には本フラバノン分子による細胞老化誘導機構の解明と薬理評価に必要な機能検定系も順調に整備され、次年度以降の円滑なる研究遂行が充分可能な状況となった。以上の成果から、本研究はおおむね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、新規フラバノン誘導体によるガン特異的な細胞老化誘導機構の解明に係る研究を引き続き展開する。具体的には本誘導体刺激によるp53活性化機構を明らかにすべく、本分子応答性p53キナーゼの探索・同定を試みる。また、本分子により活性化されたp53により上方制御され、かつガン細胞の老化誘導に関わる下流の標的分子についてもトランスクリプトーム解析での結果を足がかりに検索する。更には本分子を基調としたガン細胞特異的なsenolysis誘導の可能性についても検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
一連の試験検討をトラブルなく少ない試行回数にて実施できたこと、また、現有であった試薬等にて諸検討を充分に実施できたこと、の2点が当該理由としてあげられる。次年度使用額についてはフラバノン誘導体によるガン特異的細胞老化誘導機構の解明、ならびに本分子を用いたガン細胞老化除去の検証、に係る消耗品費として次年度予算とともに使用する計画である。
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Research Products
(4 results)