2023 Fiscal Year Research-status Report
新たに発見したフラバノン誘導体によるガン特異的な細胞老化誘導機構の解明
Project/Area Number |
22K06661
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河本 正次 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 教授 (90294537)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フラボノイド / 細胞老化 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者が新たに発見した漢方由来フラバノン誘導体が示すガン細胞特異的な細胞老化誘導機構を解明し、その知見をがんの選択的除去を基調とした次世代型抗ガン剤の創製へと応用展開することを目的としている。
2023年度においては、本フラバノン誘導体のp53ガン抑制遺伝子産物依存的なガン細胞選択的老化誘導機構を明らかにすべく、同分子の刺激により発現誘導されるp53の下流分子群をトランスクリプトーム解析データより検索した。その結果、ある種のアラキドン酸カスケード構成酵素が本分子の刺激により著明に発現誘導されること、また当該酵素に対する選択的阻害剤が同フラバノンによるガン特異的細胞老化誘導作用を部分的に抑圧しうることを見出した。
また本分子のガン特異的細胞老化誘導に対するATM(DNA損傷センサー・p53の上流キナーゼ)阻害剤の影響を確かめたところ、細胞老化誘導作用が抑制されないことが判明した。この結果から、本フラバノン誘導体によるp53の活性化が従来のDNA損傷チェックポイント分子群を介さない新規の機構によりなされている可能性が浮上してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標としていた漢方由来新規フラバノンにより活性化されるp53下流の責任分子(=ガン特異的な細胞老化誘導に関わる分子)を同定できたこと、ならびに、本フラバノンの刺激によるp53の活性化が新規の機構によるものであることを示し得たことから、本年度の研究も順調に遂行できたものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展開としてまず、トランスクリプトーム解析データをベースとして漢方由来新規フラバノン誘導体の刺激によるp53活性化のシグナル伝達経路を推定するとともに、本分子に応答して活性化されるであろう新規p53キナーゼの同定、ならびに、当該キナーゼによるp53上のリン酸化サイトの同定を試みる。更に想定新規キナーゼの活性化に至るDNA損傷以外の物理化学的刺激の本態を探るべく、本フラバノンを母体とした蛍光プローブによる細胞への動態解析も実施する。更には、当該一連の知見を標的としたガン細胞の選択的な除去剤の開発を示唆しうる実験証拠も得たい考えである。
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Causes of Carryover |
本年度に想定していたフラバノン誘導体刺激により駆動するp53下流分子を極めて速やかに発見・同定できたことが主たる理由である。他方、もう一つの懸案であるフラバノン刺激により上方制御されるであろうp53活性化分子については既知主要分子でないことは示せたものの、その実態は未だ明らかではない。そこで残額についてはフラバノン誘導体により活性化される新規p53活性化分子(キナーゼ)の発見、本フラバノンの細胞内イメージング解析、ならびに当該知見の応用実施例を実験的に示す消耗品費として次年度予算とともに使用する計画である。
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