2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚型リーシュマニア症新規治療薬「熱帯紫雲膏」創出に向けた生物有機化学的研究
Project/Area Number |
22K06669
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
安元 加奈未 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (70412393)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リーシュマニア症 / 薬用植物 / 天然活性物質 / 熱帯感染症 / 抗リーシュマニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、原虫性熱帯感染症であるリーシュマニア症に苦しむ途上国の生活向上という社会実装を目指し、現地の植物資源を用いて安価な「熱帯紫雲膏」創出にむけ、生物有機化学的研究展開を行うものである。新たなシーズ探索とともに、これまで見つかっている抗リーシュマニア活性を有するキノン系化合物やフラボノイド系化合物に共通する抗酸化活性が作用機序解明の鍵となると推定し、本研究では、トリパノソーマ科特異的酸化還元酵素 (トリパノチオン) への影響,酸化ストレスに伴う原虫のアポトーシス誘導活性,酸化ストレス応答に関与するポリアミン生合成や輸送への影響を検討する。2022年度は、作用機序を解明するための活性化合物を多種得ることを目的として熱帯領域であるミャンマーに生育する植物から、抗リーシュマニア活性を有する化学成分を探索することを目的としてイソマツ科、マメ科、トウダイグサ科、リンドウ科植物エキスについて各種クロマトグラフィー等の化学的分離手法を用いて成分探索を行った。その結果、これまでに計42種の化合物を単離した。これらについて、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量分析等の機器分析により、それぞれの化学構造を決定し、リーシュマニア原虫に対する活性をIC50値にて算出した。また、トリパノソーマ科特異的酸化還元酵素 (トリパノチオン) への影響を検討するための予備実験として現在の生理活性試験法においてオルニチン脱炭酸酵素阻害剤としてDFMO(α- difluoromethylornithine)を作用させる実験を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において、次年度以降に行う作用機序解明のための各実験系に用いる活性物質を既知物の他にミャンマー産薬用植物から単離精製し、現在まで順調に進行している。また、トリパノソーマ科特異的酸化還元酵素への影響を検討するための準備としてオルニチン脱炭酸酵素阻害剤を用いた検討を開始した。 以上のことから、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
023年度の研究推進方策としては、現在、活性化合物を見出すべく分離に着手している植物エキスについて、引き続き単離精製を行いより強力な活性物質の探索を行う。2022年度に得られた化合物ならびにこれまでに得られた顕著な活性を示す化合物群については、他の皮膚型原虫種に対する詳細な改良MTT法による抗リーシュマニア活性を検討するとともに、宿主細胞モデルであるRAW264.7についても影響を調べる。 また、抗酸化能を有する活性化合物群に対する作用機序の解明を目指し、化合物を作用させた際のミトコンドリア膜電位差によるリーシュマニア原虫のアポトーシスならびにトリパノチオン還元酵素アッセイの検討を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度必要な活性試験に使用するキット類が高額であるため、消耗品費として6万円程度繰り越し、購入に充足することとした。
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