2023 Fiscal Year Research-status Report
皮膚型リーシュマニア症新規治療薬「熱帯紫雲膏」創出に向けた生物有機化学的研究
Project/Area Number |
22K06669
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
安元 加奈未 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (70412393)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リーシュマニア症 / 薬用植物 / 天然活性物質 / 熱帯感染症 / 抗リーシュマニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、原虫性熱帯感染症であるリーシュマニア症に苦しむ途上国の生活向上という社会実装を目指し、現地の植物資源を用いて安価な「熱帯紫雲膏」創出にむけ、生物有機化学的研究展開を行うものである。新たなシーズ探索とともに、これまで見つかっている抗リーシュマニア活性を有するキノン系化合物やフラボノイド系化合物に共通する抗酸化活性が作用機序解明の鍵となると推定し、本研究では、トリパノソーマ科特異的酸化還元酵素 (トリパノチオン) への影響,酸化ストレスに伴う原虫のアポトーシス誘導活性,酸化ストレス応答に関与するポリアミン生合成や輸送への影響を検討する。2023年度は、引き続き作用機序を解明するための活性化合物を単離精製し、その量上げを目的として熱帯領域であるミャンマーに生育する植物から、抗リーシュマニア活性を有する化学成分を探索することを目的としてイソマツ科、マメ科、トウダイグサ科、リンドウ科植物エキスについて各種クロマトグラフィー等の化学的分離手法を用いて成分探索を行った。これらについて、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量分析等の機器分析により、それぞれの化学構造を決定し、リーシュマニア原虫に対する活性をIC50値にて算出した。また、細胞に対する影響を検討するために、宿主細胞モデルであるRAW264.7細胞、J774.1細胞を用いて増殖抑制試験を行った。これまでに得られた化合物ならびに既知活性化合物について、網羅的遺伝子解析(RNAseq)を実施するべく、作用量検討のために化合物のSelectivity indexを算出し遺伝子抽出を行うための原虫の大量培養条件について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において、最終年度に行う作用機序解明のための各実験系に用いる活性物質を既知物の他にミャンマー産薬用植物から単離精製し、現在まで順調に進行している。また、強い活性を示す化合物も単離できており、量上げに取り組んでいる。リーシュマニア原虫ならびに宿主細胞モデルにて細胞に対する増殖抑制試験も実施した。また、網羅的遺伝子解析(RNAseq)を行うための各種条件検討を開始した。以上のことから、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究推進方策としては、既報活性化合物ならびに量上げを行った化合物について抗酸化能を有する活性化合物群に対する作用機序の解明を目指し、化合物を作用させた際のミトコンドリア膜電位差によるリーシュマニア原虫のアポトーシスならびにトリパノチオン還元酵素アッセイの検討を開始する予定である。また、化合物を作用させた原虫の遺伝子を網羅的に解析するRNAseqを検討し、発現変動する遺伝子群の探索を試みる。加えて活性化合物およびエキスを用いた軟膏剤を試作する。
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