2023 Fiscal Year Research-status Report
Linear and nonlinear modeling of fundamental theory explaining the prescription system of Kampo (traditional Japanese medicine) formulas based on chemistry and data science
Project/Area Number |
22K06690
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
岡田 岳人 徳島文理大学, 薬学部, 特別研究員 (60412392)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 漢方処方 / 漢方薬 / 生薬 / 証 / 化学 / 機械学習 / 線形 / 非線形 |
Outline of Annual Research Achievements |
個々の生薬の組み合わせにより製される漢方方剤(漢方薬)は、漢方独特の診断基準「証」(個人の状態・体質を診断する基準)に基づいて患者に処方される。その処方システムは多様な治療経験・エビデンスを根拠に成立しており、全体像は複雑である。このシステムの基礎理論を包括的に理解することを目的に、化学分析と情報・数理解析を基盤とした漢方研究を進めている。 研究実施二年度目となる本年度は、昨年度に引き続き方剤とその適用「証」を主な研究対象とし、それらのデータを基にコンピュータを用いた機械学習による線形・非線形数理解析を行った。線形・非線形解析には、方剤の構成生薬量・比、方剤サンプルの包括的化学分析データ、およびそれらと「証」とを結び付けたデータを用いた。これらは大量データとなるため、解析内容に応じた情報を引き出せるよう研究遂行用にデータベース化を進めている。また、包括的化学分析データは質量分析(Mass Spectrometry; MS)などから得られたものを用いている。線形解析は、過去の研究において有用性が確かめられた主成分分析(Principal Component Analysis; PCA)など手法を用いている。非線形解析については、扱うデータの構造に対して有効な方法を検討中ではあるものの、例えば、ニューラルネットワークや勾配ブースティング木といった手法により進めている。これら一連の研究から処方システム基礎理論をモデル化することによって、既存処方の構成生薬量を増減した場合に変化する適用「証」の予測や、より一般化された分かりやすい漢方薬使用などへと繋げていく考えである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題二年度目となる本年度の研究は、当初の計画に沿って進められた。漢方方剤の構成生薬量・比、化学分析結果、そして適用「証」から主に成る漢方処方データベースは、後に行うコンピュータを用いた機械学習(線形・非線形数理解析)の元データとして用いるために構築した。特に、解析における教師なし学習用データと、教師あり学習における説明変数・目的変数を整理しつつ作成した。この研究用データベースは、人的に扱うものとしては情報量が非常に大きなものとなったため、処方情報等の追加・更新に加え、入力内容の再確認にも多大な労力・時間を要した。また、化学分析データは方剤サンプルの含有成分を包括的に分析する手法、いわゆるノンターゲット化学分析から得られるものを用いた。この方剤ごとの化学分析データは、各方剤の化学フィンガープリントとみなすことができる。なお、これら化学フィンガープリントはMSや核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance; NMR)を基盤とする方法から得られている。また、機械学習における教師あり学習と教師なし学習両方において行う線形解析については、過去の研究から得られた知見も応用しつつPCAや部分最小二乗(Partial Least Squares; PLS)法などによって行った。他方、教師あり学習における非線形解析については、ニューラルネットワークや勾配ブースティング木などの手法により行った。いずれの機械学習においても、データの構造や研究目的に最適と考えられる方法を検討しつつ進めた。以上の流れで研究対象とした方剤―「証」の包括的関係性を解析しているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究において解析用に構築したデータベースの情報を基にした線形・非線形の数理解析については、研究方法の妥当性や得られつつある結果の再現性が良好であったため、現在のところ当初の研究計画通りに進める予定である。 データベースの内容については、研究期間を通して更新および見直しを行う。また、数理解析については用いている方法の検証と併せて新たな手法を取り入れられるかどうか検討しつつ進めていく考えである。そして、本研究によって一定の成果が得られた際には、学会・シンポジウムでの発表や学術論文・書籍などにより研究結果を公表していく。
|
Causes of Carryover |
研究の一部を節約や手持ちの物品により補ったところもあり支出が抑えられた。また、当初の見込みよりも部分的に情報・数理解析や研究成果公表にかかる費用が抑えられた。なお、次年度は研究遂行のために必要な物品の購入や研究成果発表などへの支出が既に見込まれており、生じた次年度使用額を合わせた助成金を有効に活用させていただく予定である。
|
Remarks |
(1) 岡田 岳人 (2023) 植物と共生 すぐそこにある分子: 複雑な漢方処方システムを化学と情報・数理の観点からひも解く. 現代化学 6月号 (株式会社東京化学同人), 627: 62―64.
|