2023 Fiscal Year Research-status Report
がん治療口内炎の局所治療を可能とするFGF-ヘパリン修飾ナノエマルション含嗽剤
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22K06705
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
池内 由里 (高橋由里) 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (10339525)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 化学放射線療法に伴う口内炎 / 線維芽細胞増殖因子 / ナノエマルション / 含嗽剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔粘膜からの高分子薬物の送達は大きな可能性を秘めているが、口腔粘膜からの薬物送達には、多層口腔粘膜上皮細胞による物理的バリアや唾液による流出などの課題がある。ナノエマルション製剤は、親水性薬物の親油性を高めることで製剤の粘膜への親和性を改善し、傍細胞経路からの薬物輸送を引き起こす可能性がある。そこで、口腔粘膜上皮細胞に局所的に活性タンパク質であるFGFを送達することを目的に、FGFをヘパリンで保護した上でナノエマルションとした含嗽剤の製剤化を行った。まず、FGFを保持させるのに最適な構造の油相の形成を行った。油相にはMCTを使用し、乳化剤としてオレイン酸ポリグリセリルを用いた。組成及び調製方法の最適化を行い、油滴サイズの最小化を行った。本研究では、活性体FGFを口腔粘膜上皮細胞に送達するため、FGFをヘパリンで保護し、製剤化することを目指している。そこで、負に帯電しているヘパリンを油滴表面に修飾するため、油滴のゼータ電位を正とした。カチオン性界面活性剤を添加して製剤化したナノエマルションにおいて、油滴表面のゼータ電位が正となることを確認した。次に、油滴表面へのヘパリン修飾を行った。ヘパリン修飾を行うことで、油滴のゼータ電位が正から負になることを確認した。また、最適なヘパリン添加量を評価するため、遊離のヘパリン量を測定した結果、遊離のヘパリン量はわずかであることを確認した。さらに、ヘパリン修飾ナノエマルションへFGFを吸着させることで、FGF修飾ナノエマルションの製剤化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、FGFを保持させるのに適した構造の油相とするため、製剤組成及び調製方法の最適化を行い、油滴の粒子径の最小化を行うことができている。ヘパリンは酸性ムコ多糖類であり、分子中に多数の硫酸基が含まれていることから負に帯電している。そこで、油相表面のゼータ電位を正にするため、陽イオン性界面活性剤であるStearylamine Hydrochloride (SA) を添加して製剤化を行った結果、油相表面のゼータ電位を正にすることができた。正に帯電している油滴表面にヘパリン修飾を行った結果、油滴のゼータ電位が正から負になることが確認できた。さらに、ヘパリン修飾ナノエマルションへFGFを吸着させ、FGF修飾ナノエマルションを製剤化することができている。以上より、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、FGF修飾ナノエマルションの製剤化が確認できている。口腔粘膜細胞に活性体FGFを送達するうえで、エマルション製剤からのFGFの放出性は重要な製剤特性となる。そこで、FGF修飾ナノエマルションからのFGF放出性について評価する。適した放出挙動を得るため、ヘパリン及びFGFの添加量の最適化を行う。さらに、FGF修飾ナノエマルションの口内炎に対する治療効果について、in vivoでの評価を行う。ラットにおいて口内炎モデル動物を作成し、FGF修飾ナノエマルション含嗽剤の炎症疾患に対する効果について粘膜の組織学的変化を観察することで評価する。対照としてFGF水溶液についても検討し、新規治療システムの治療効果を明らかにする。一方、エマルションにおいては、製剤の安定性に課題がある。そこで、エマルション製剤を固形製剤化し、安定性、使用性の向上を図ることを検討する。
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Causes of Carryover |
ヘパリンおよびFGFの定量に使用する測定キットについて、当初見込んでいた使用量よりも少ない量で評価を行うことができたことから、次年度使用額が生じる結果となった。ヘパリンおよびFGFの定量に使用する測定キットについては、今後さらに、製剤からの薬物放出特性を評価する際に使用する予定である。
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