2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of the effect of the cancer vaccine using SV40 VLP that induces adaptive immune responses
Project/Area Number |
22K06731
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
川野 雅章 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30447528)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | Simian Virus 40 / Virus-like particle / CD86 / CCL3 / CCL4 / Ubiquitin / Chaperon / Adaptive immune response |
Outline of Annual Research Achievements |
サルのポリオーマウイルスであるSimian Virus 40 (SV40) のウイルス粒子は、直径約50 nmの正二十面体構造を有している。このウイルス粒子は、主要構造タンパク質であるSV40 VP1が5つ集まり、SV40 VP1五量体と呼ばれるサブユニットを形成し、このSV40 VP1五量体が72個集まることで構築されている。我々は、昆虫細胞内でSV40 VP1のみを発現させることで、非感染性のウイルス様粒子 (VLP, Virus-like particle) を大量に調製できる方法を発明した。また我々は、非主要構造タンパク質であるSV40 VP2のカルボキシル末端に抗原タンパク質を融合した遺伝子を構築し、SV40 VP1と共に昆虫細胞内で発現させることで、SV40 VP2を介して内部に抗原タンパク質が内包されたSV40 VLPを調製できる方法も発明した。さらに我々は、抗原内包SV40 VLPを投与すると、獲得免疫誘導に際し、SV40 VLPが炎症を誘導せずにB細胞に対してCD86の発現誘導およびCCL3/4の分泌の誘導を行うことを明らかにした。加えて我々は、SV40 VLPが不完全フロイントアジュバントを用いた細胞傷害性T細胞の誘導よりも500倍以上の効率で細胞傷害性T細胞を誘導し、Alumアジュバントと同等の抗体産生を誘導することを明らかにした。さらに我々は、SV40 VLPによるCD86の発現上昇が恒常的なCD86のユビキチン化による分解誘導を阻害することで誘導されている可能性を示した。我々はまた、このSV40 VLPによるCD86の発現上昇はシャペロンタンパク質阻害剤でも抑制されることを示した。そこで本研究で我々は、SV40 VLPとCD86のユビキチン化およびシャペロンタンパク質の関連を解析するために、これらの宿主因子の同定と相互作用解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、Simian Virus 40 (SV40) のVirus-like particle (VLP) による獲得免疫誘導機構の解析から、SV40 VLPの作用により、B細胞においてCD86の発現上昇が誘導されることを明らかにした。この発現上昇は、恒常的にユビキチン化されて分解されることで発現抑制されているCD86が、SV40 VLPによりユビキチン化抑制または脱ユビキチン化されることで発現上昇することが示唆された。このCD86の発現上昇は、シャペロンタンパク質阻害剤で抑制されることから、シャペロンタンパク質の関与も考えられる。そこで我々は、SV40 VLPとCD86のユビキチン化およびシャペロンタンパク質の関連を解析するために、これらの相互作用解析を行った。そのために我々は、SV40 VP1と相互作用する宿主因子を、Yeast two hybrid (Y2H) 法を用いて探索した。その結果我々は、SV40 VP1と相互作用する宿主因子候補として、シャペロンタンパク質を発見した。さらに我々は、発見したシャペロンタンパク質とSV40 VP1が相互作用して他のタンパク質のリクルートが誘導されるという仮定の下、シャペロンタンパク質とSV40 VP1が発現している状態で相互作用する宿主因子をYeast three hybrid (Y3H) を用いて探索した。その結果我々は、シャペロンタンパク質と相互作用する宿主因子としてユビキチン関連酵素を発見した。SV40 VLPにより発現上昇するCD86は、シャペロンタンパク質阻害剤およびユビキチン化の阻害で発現抑制されることから、Y2HおよびY3H法で発見した因子がこの発現過程に関与している可能性が示唆される。よって我々は、SV40 VLPによる獲得免疫誘導機構の解析が進んでいることから、研究は、おおむね順調に進展している、と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
Simian Virus 40 (SV40) のウイルス様粒子 (VLP, Virus-like particle) によりB細胞において発現上昇するCD86は、シャペロンタンパク質阻害剤およびユビキチン化の阻害で発現抑制されることから、Yeast two hybrid (Y2H) および Yeast three hybrid (Y3H) 法で発見した因子がこの発現過程に関与している可能性が示唆される。CD86は抗原提示細胞表面で発現しており、細胞傷害性T細胞やヘルパーT細胞表面に発現しているT細胞受容体の補助刺激因子のCD28を刺激して、これらのT細胞を活性化させるのに重要な役割を果たしている。細胞傷害性T細胞およびヘルパーT細胞は、獲得免疫において重要な役割を果たしているため、CD86の発現上昇に関与するシャペロンタンパク質およびユビキチン関連酵素はSV40 VLPによる獲得免疫誘導機構に重要な役割を果たしている可能性がある。このことを解析するために我々は、Y2HおよびY3Hで発見した、シャペロンタンパク質、ユビキチン関連酵素、および、SV40 VP1との相互作用を免疫沈降法により解析する。また我々は、発見したシャペロンタンパク質およびユビキチン関連酵素に対する阻害剤およびsiRNAを用いて、in vitroにおいて、B細胞においてSV40 VLPにより誘導されるCD86の発現上昇、脱ユビキチン化、抗原提示、細胞傷害性T細胞、および、ヘルパーT細胞の活性化における発見した因子の関与を解析する。さらに我々は、これらの阻害剤およびsiRNA の投与によって、SV40 VLPの内包抗原に対する獲得免疫の誘導が抑制されることを解析する。これらの解析により、SV40 VLPによる獲得免疫誘導機構の一端が明らかになり、新たな獲得免疫誘導剤の開発に繋がることが期待される。
|
Causes of Carryover |
本年度において我々は、Simian Virus 40 (SV40) のウイルス様粒子 (VLP, Virus-like particle) により活性化したB細胞において発現上昇するCD86がシャペロンタンパク質阻害剤およびユビキチン化の阻害で発現抑制されることを示し、さらに、SV40 VP1との相互作用するタンパク質として、シャペロンタンパク質およびユビキチン関連酵素を発見した。SV40 VLPによるB細胞の活性化シグナル伝達経路およびCD86の発現上昇経路の解析のために、シグナル伝達経路阻害剤、シャペロンタンパク質阻害剤、および、ユビキチン化阻害剤を用いた。さらに、SV40 VP1と相互作用する細胞性因子の探索のために我々は、Yeast two hybridおよびYeast three hybrid法を行い、SV40 VP1と相互作用する細胞性因子の遺伝子配列の解析を行った。また、次年度使用額確定後に、本年度に使用予定の試薬を購入し、本年度使用額としてはほぼ予定通り使用した。若干の次年度使用額が発生したが、それは試薬の使用量を抑えることにより発生したものである。この若干の次年度使用額は、次年度における試薬購入費用として充当することを予定している。具体的には、獲得免疫誘導機構の解析およびSV40 VLPがんワクチンの効能解析において必要となる試薬購入費用に充当する予定である。
|