2022 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患発症予測バイオマーカー探索:血清エクソソーム由来カルボン酸の有用性の検討
Project/Area Number |
22K06733
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小野里 磨優 東邦大学, 薬学部, 講師 (50610094)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田形 弘実 東邦大学, 医学部, 助教 (50888542)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | カルボン酸 / キラル / 誘導体化 / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 市販のN-CBZ化アミノ酸誘導体を原料に、3~4段階の反応を経て4種のカルボン酸標識化試薬を合成した。ODSカラムを装着した高速液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)を用いて、光学活性有機酸誘導体の光学異性体分離能、MS/MSによる検出感度等を比較した。その結果、合成した4種のカルボン酸標識化試薬のうち、キラルイミダゾリジノン環を有するCIM-C2-NH2は、乳酸やシトラマル酸の光学異性体分離が非常に良好であった。加えて、モノカルボン酸とジカルボン酸誘導体では、それぞれm/z 91.1と278の特徴的なプロダクトイオンを生成することを見出した。この結果から、モノカルボン酸とジカルボン酸の識別が可能であることが示唆され、研究2年目に実施するキラルカルボン酸メタボロミクスへの高い適用性が期待できる。 (2) (1)で最も光学異性体分離能と検出感度が高いと見出されたCIM-C2-NH2をヒト血清やエクソソームへの適用する前に、有機酸を多く含む飲料であるワインを試料として分析をおこなった。D-乳酸、L-乳酸、L-酒石酸、DL-リンゴ酸、コハク酸、D-シトラマル酸が検出され、CIM-C2-NH2の飲料への適用性は十分に示された。本成果は、論文発表及び学会発表した。 (3) 続いて、CIM-C2-NH2をリンゴにも適用し、分析をおこなったところ、D-シトラマル酸濃度は、リンゴの果皮では1.24~37.8 mg/wet 100 g、果実では0.138~1.033 mg/wet 100 gであり、黄色いリンゴの皮にD-シトラマル酸が高濃度に含まれていることが見出され、食品への適用も示された。更に、リンゴのみでなく、市販のリンゴジュースからもD-シトラマル酸は検出されたが、ウメ、ブルーベリー、シソジュースからは検出されないというD-シトラマル酸の特性も明らかにできた。本成果は、論文発表及び学会発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 当初に開発したCIM-C1-NH2試薬に加え、3種類の試薬を開発し、CIM-C2-NH2試薬によるキラル分離能が最も高いことが見出された。 (2) 複数のカルボキシ基を有するカルボン酸や、カルボキシ基とヒドロキシ基を併せ持つオキシ酸についても、CIM-C2-NH2試薬による標識誘導体の開裂パターン・規則性を見出すことができた。 (3) LC-MS/MSを用いたカルボン酸の測定系を構築することができた。 (4) CIM-C2-NH2試薬の食品や飲料への適用性も示すことができ、ヒト血清やエクソソームへの適用も十分に期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当教室で保有しているARMS群、Control群の血清および血清より市販キットを用いて単離・回収したエクソソームの膜を破壊して得た血清エクソソーム画分をCIM-C2-NH2により標識化後、超高速HPLC-高分解能質量分析計(LC-HRMS)で測定する。カルボキシ基を有する分子をピークとして網羅的に検出した後、各々のピーク面積を統計解析ソフトにより多変量解析し、2群の判別に寄与するピーク(カルボン酸標識化体)を抽出する。抽出されたピークの元素組成をデータベース上で検索し、2群間で有意な濃度変動をしている血清中およびエクソソーム画分のカルボン酸を同定する。併せて、血清中・エクソソーム画分のカルボン酸濃度と臨床症状スコア(陰性症状・陽性症状・認知機能の尺度)との相関性も明らかにする。
|
Causes of Carryover |
「謝礼」として計上していたが、今年度は謝礼を支出する機会がなかったため、次年度に繰り越すことになった。 2022年度の未使用額と2023年度の研究費とを合わせて、血液試料提供者及び採血等の作業協力者への謝礼、血清及びエクソソーム画分のカルボン酸測定の為の試薬等に使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)