2022 Fiscal Year Research-status Report
尿細管のプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体と生理的意義
Project/Area Number |
22K06764
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
橋本 征也 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (90228429)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | キニジン / ビソプロロール / 尿細管分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、イヌ腎上皮由来MDCK細胞において、脂溶性カチオンであるキニジンがプロトンとの対向輸送によって取り込まれ、また排出方向にも輸送されることを2016年に世界に先駆けて報告した。この脂溶性カチオンの尿細管細胞における細胞輸送は、脂溶性カチオンによって特異的に阻害を受けるものの、水溶性カチオンによって阻害を受けないことから、水溶性カチオンに対する側底膜のOCTや冊子縁膜のMATEとは異なる輸送系によって媒介されると考えられた。その後申請者は、キニジンやビソプロロールが、ブタ腎上皮LLC-PK1細胞の惻底膜に比べ冊子縁膜において、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系によって強く認識されるという結果、およびビソプロロールのラットにおける尿細管の分泌が尿のpHによって顕著に影響を受けるとの知見を得た。さらにこのプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系は、ヒト腎上皮由来のHEK293細胞にも発現していることを明らかにするとともに、基質認識性を検討した結果、脂溶性カチオンの脂溶性(logD値)と極性表面積(PSP値)に相関することを明らかにした。 上記の知見から申請者は、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体は、タンパク質であるトランスポーターでは無く、腎上皮細胞の冊子縁膜に多く存在する酸性リン脂質が少なくとも一部関わっていると考えた。しかし、ホスファチジルセリンを含むホスファチジルコリンのリポソームでは、脂溶性カチオンの取り込みに、極性表面積(PSP値)に有意な相関が認められなかった。そこで、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンに加え、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、コレステロールを添加した5成分系によるリポソームを作成したところ、基質認識性は脂溶性カチオンの脂溶性(logD値)のみならず極性表面積(PSP値)に相関することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5成分系によるリポソームによる脂溶性カチオンの取り込みを評価したところ、LLC-PK1細胞と同様に、基質認識性は脂溶性カチオンの脂溶性(logD値)のみならず極性表面積(PSP値)に相関することが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
尿細管のプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体が、酸性リン脂質を含む生体膜である可能性が明らかになったことから、従来より脂溶性カチオンのトランスポーターとして知られるP-糖タンパク質の関与を明らかにすることによって、尿細管のプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の生理的意義について検討を加える。
|
Causes of Carryover |
研究期間が当初見込みより短かったため。 残額は次年度支出予定額と合わせて適切に執行する計画である。
|