2022 Fiscal Year Research-status Report
人工知能機械学習を応用した高精度周術期休薬判断アルゴリズムの構築
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22K06769
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
木村 早希子 佐賀大学, 医学部, 薬剤師 (70601045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 修 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20357891)
山口 暢彦 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (80363422)
齋田 哲也 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (80419621)
島ノ江 千里 佐賀大学, 医学部, 教授 (10734064)
木村 晋也 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359794)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人工知能 / 機械学習 / 周術期休薬判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
周術期の不適切な休薬は出血や血栓症などにより重篤な障害や死に至る可能性がある。我々は、これまでに周術期の迅速で的確な休薬判断のために、薬、中止リスク、継続リスクに応じて科学的根拠に基づき休薬期間を表示するアプリを開発し、臨床試験で有用性を確認した(Kimura et al. Medicine 2020)。その結果、アプリの休薬判断は医師の判断と一部乖離しており、患者個別の背景や病態に応じて休薬判断精度を向上させることが課題として示された。本研究では、人工知能(artificial intelligence: AI)機械学習の適用可能性を探索する。AIは休薬判断根拠となる文献情報や臨床で医学・薬学的考察に基づいて決定した休薬判断症例を多数学習し休薬判断アルゴリズムを構築することで、類似事例の休薬判断を行うものとする。更に、休薬判断症例の薬物血中濃度・血液凝固活性の変化や臨床経過を解析し、専門家によりAI判断結果の妥当性を検証・補正する。 1)医療データ収集/数値化: AI計算環境を整備し、機械学習のための医療データを数値化した。休薬期間の判断根拠として、血栓リスクと出血リスクの他に、「血小板数」と「APTT or PT 異常」を新たに追加することにより、従来のアプリで休薬期間推定に矛盾が生じるような場合においても休薬期間を推定することを可能とした。 2)休薬期間判断のためのAI構造設計/アルゴリズム構築:機械学習ソフトウェアWEKAを用いて仮想症例に対する周術期休薬期間を解としたベイジアンネットワークモデルを構築した。 3)アルゴリズムの可視化:構築したアルゴリズムをアプリに組み込むために、PythonおよびJavaScriptライブラリであるD3.jsを用いて動作入出力を検証するためのインターフェースを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りにR4年度において、医療データ収集/数値化環境整備、休薬期間判断のためのAI構造設計/アルゴリズム構築およびアルゴリズムの可視化いずれに関しても当初予定していた通り進行している。さらに、より高精度な休薬期間の判定を実施するために、ファーマコメトリクスに機械学習を応用した分子標的薬の血中・組織中濃度シミュレーションモデルなども開発しており、これらの要素技術を組み合わせることで、今後より高精度なシステムを構築する予定である。このように、現在のところ、研究計画に沿った実験とその関連研究を順調に展開しており、今後も特に大きな技術的問題等は生じないと考えらえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の項目に沿って研究を行う。 1)R4年度構築した周術期休薬判断アルゴリズムについて院内の専門家会議でAIが算出した休薬期間「AI休薬判断アルゴリズム」の信憑性について検証し改善の方針を検討、AI学習の構造を補正して休薬判断アルゴリズムを再構築する。 2)R4年度の予備実験で得られた周術期休薬判断パラメータについて、実際の臨床症例およびガイドラインベースの仮想パターン症例の術前中止薬判断症例を収集し、統計解析ソフトを用いて傾向を解析する。症例数が少ない場合など十分な解析ができない可能性も想定されるので、その時点での機械学習の精度を勘案しつつ必要症例数を見積もる。 3)ファーマコメトリクスに機械学習を応用した分子標的薬の血中・組織中濃度シミュレーションモデルを構築する。周術期にガイドライン等の科学的根拠に基づき休薬した患者について、手術前後の休薬対象薬物血中濃度を測定する。併せて患者の血液凝固活性の変化、周術期合併症、休薬関連事象データを収集・統計解析する。得られた結果に基づきAI休薬期間判断制度を検証する。
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Causes of Carryover |
設備備品費については、本研究と関連性のある研究で他の財源を得てAI用の数値計算サーバーを整備したが、当該サーバーを用いた研究の結果をもって、本研究で予定していた検討事項に資する適切な知見が得られたため、本研究での新規サーバー購入は見送った。 国内旅費については、オンラインでの開催となったため、旅費が不要になった。 人件費・謝金については、R4年度の本研究の進捗状況としては、研究支援者の雇用は必ずしも必要な状況とならなかった。 R4年度に使用予定であったこれらの財源は、R5年度のファーマコメトリクスに機械学習を応用した分子標的薬の血中・組織中濃度シミュレーションモデル構築に必要な機器・ソフトなどの購入および研修費に充てることで休薬判断症例の薬物血中濃度・血液凝固活性の変化・臨床経過解析の基盤を強化する。
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